「93歳になった今も、肺活量は40代男性レベル」 サックス奏者・渡辺貞夫が明かす健康術

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久しぶりにアメリカへ

〈渡辺貞夫の音楽は、なぜ70年以上もリスナーに愛され続けているのか。時代を経ても新しくあり続けているのか。オリジナリティーが豊かなのか。いくつもの理由が考えられるが、その大きな一つは旅だろう。

 CDショップで、渡辺のアルバムはジャズの棚にカテゴライズされている。しかし、実際には、ブルース、ラテン、ボサ・ノヴァ、アフリカン……など、ジャズに限らず、世界中のさまざまな音の要素が感じられる。だからこそ、多くのアーティストとは異なる渡辺貞夫ならではの音の景色が繰り広げられる。〉

 僕の音楽にとって、あるいは僕自身にとっても、旅の影響はものすごく大きいですね。旅は曲や演奏とすごく密に関係しています。都市も好きですが、アフリカやブラジルやチベットにはずいぶん刺激を受けました。

 70年代前半まで、僕はアメリカだけでなく、ヨーロッパでもずいぶんコンサートをやっていたんですよ。さらにアフリカの小さな村を訪ねるようになり、僕の音楽は大きく変わったんじゃないでしょうか。

 70年代、アフリカの未開発の集落には、生きた自然の音がありました。

 風のそよぎ、川のせせらぎ、鳥のさえずりはもちろん、子どもたちの遊ぶ声や人々が生活する音も自然で、シンプル。僕はすっかり憧れちゃってね。

 アフリカに行くときには、鉛筆やライターや缶入りのドロップあめを用意します。それで現地の学校を訪ね、「子どもたちの歌を聴かせてください」とお願いするんです。

 すると、みんな、外に出て歌ってくれるんですよ。その声が素直でね。僕はうれしくなって、子どもたちの歌と一緒にサックスを吹いてしまう。彼らはサックスを見るのも、音を聴くのも初めてだから喜んで、もっと歌ってくれる。セッションですよ。楽しかった。だから、またすぐにアフリカへ行きたくなります。

 ブラジルやチベットも魅力的でしたよ。やはり、子どもたちが素直でね。ただ、チベットは中国の自治区で統制が利いているから、子どもたちが大人の顔色をうかがってしまう。それはちょっと残念でした。

 いずれにしても、僕はほんとうに旅に生かされてきました。

もっと音を磨きたい

〈前人未踏のキャリアを歩んでいる渡辺だが、音楽家として今後どのようなビジョンを描き、展開し、次世代、次々世代になにを伝えていくのだろう。〉

 来年あたり、久しぶりにアメリカへ行きたい。6都市で、親しいプレイヤーと演奏したいですね。

 コロナ禍もあったので、向こうのミュージシャンたちにはご無沙汰してしまいました。毎年日本に来てもらって、付き合ってもらっているミュージシャンたちもいますが、そろそろこちらからも行かなければね。まだミュージシャンのスケジュールを確認している段階です。

 今は僕自身がもっと音を磨きたい。自分のステージで、全曲納得できたことは一度もないですから。だからこそ、長く続いているのかもしれませんけれどね。

 次世代にも、これまでのリスナーにも、演奏で伝えたい。やっぱりミュージシャンは「音一発」です。

週刊新潮 2026年4月30日号掲載

特別読物「デビュー75周年 93歳になった渡辺貞夫『サックス奏者人生』と『健康管理』を語る」より

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