「酒もタバコもやらないのに…」 心筋梗塞になった血管外科医が明かす「油断」 「毎日のように肉や甘い物を」

ドクター新潮 ライフ

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「即入院」と言われ……

 翌日はなんの症状もなかった。念のため、クリニックのスタッフに心電図を取ってもらったが、幸いにも心筋梗塞を示す異常は見られなかった。安心したわけではないが、血液検査を行って、結果を待つこととなった。

 2日後、血液検査の結果を見てがくぜんとした。心筋細胞が壊死・損傷した際に血液中に放出されるタンパク質のトロポニンTと、心筋への過度な負担で分泌されるホルモンのNT-proBNPが桁違いな異常値を示していたのだ。トロポニンTは心筋が壊れた目印であり、NT-proBNPは心臓の負担が大きくなっているサインとされる。この二つは、通常の健康診断ではまず測らないが、心不全が疑われるときに測る検査項目だ。

 急いで知人の循環器の医師へ相談したところ、「即入院」と言われた。その日の夜に病院へ向かうと、すぐさまステント(筒状の網)とバルーンを使い、閉塞した冠動脈に再び血を流すためのカテーテル治療が行われた。カテーテル治療は、手首や足の血管から細いチューブを通し、詰まった部分を広げて血を流す方法である。

「治療される側」として手術台に

 血管外科医として働く私は、これまで多くの血管内手術に携わってきた。しかしその日、初めて「治療される側」として手術台に横たわっていた。その様は、まさにまな板の上の鯉のようだった。「担当医にお任せするしかない」という感覚は、これまで経験したことのないものだった。

 血管内手術には出血(血腫)、血管損傷、不整脈、急性閉塞、造影剤による腎障害、脳梗塞、感染といった合併症がつきものだ。どうか合併症だけは起こらないでほしい――ただそれだけを祈り続けた。ステントもバルーンも、留置する際には局所麻酔のみ、覚醒した状態で施術される。何度か血管が一時的に塞がれる瞬間があり、ゴルフ場の帰りに味わったあの痛みが戻ってきた。2時間ほどで手術は終了した。

 水曜の夜に緊急で手術を行ったが、金曜日に退院し、土曜日には仕事を再開していた。わずか4日で復帰できたのは、症状が軽かったためである。また心臓を開胸するバイパス手術ではなく、カテーテル治療だったことも大きい。バイパス手術は、胸を大きく開くため、回復に1~2週間。一方、カテーテル治療は体への負担が比較的少なく、早期復帰が可能だ。心筋のダメージが大きい場合は、心臓リハビリが必要になることもある。焦らず、担当医の指示に従うことが肝心だ。

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