なぜ「愛子天皇論」を認めてはいけないのか 「“直系優先で皇位を継承すべし”という感情論で動けば、将来に必ず禍根を残す」

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 安定的な皇位継承策に関わる議論がいよいよ大詰めとなっている。衆参与野党の全体会議で取りまとめが進み、今国会中での皇室典範改正案の成立が視野に入っているのだ。もっとも、悠仁様までの皇位継承については、論点とはなっていないため、世論調査で多数を占める「愛子天皇」実現への道は進みそうにない。なぜ、「愛子天皇」を認めるべきではないとの意見が根強いのか。皇位継承の男系維持を唱える代表的な論客、国士舘大学の百地章・名誉教授(憲法学)に聞いた。「女系天皇」の問題点について述べた【前編】に続き、【後編】では、「女性天皇」の問題点について詳述する。

【前後編の後編】

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陛下のお言葉に反することに

――「女系天皇」の問題点はよくわかりました。しかし、「愛子天皇」はいかがでしょうか。愛子様は女性ですが、皇統では、今上陛下を父に持たれる「男系」に当たります。それでも、天皇に即位することに問題が生じるのはなぜでしょうか。

 はじめに「男系」「女系」とは何かを説明しますと、父方をたどると歴代天皇にたどりつく方を「男系」(父系)、母方を通じてしか皇室に繋がらない方を「女系」(母系)といいます。愛子内親王殿下は、父方をたどると今上陛下、上皇陛下、さらにその先へとたどりつきますから、「男系の女子」です。

 このことから、確かに愛子様は、理論的には天皇となられる資格をお持ちと言えるかもしれません。立派に成長され、成年皇族として活躍されており、国民的な人気が高いのは事実でしょう。しかし、そのことと「愛子様を天皇にすること」とは別問題です。

 皇室の歴史を踏まえた場合、確かに歴史上8方10代の女性天皇がおられました。このことから愛子様を天皇に、と主張する人もいますが、いずれの女性天皇も、あくまで「相応しい男子」が存在しない場合の臨時的、例外的なものでした。皇位継承の本筋は、男系男子による継承であったことは揺るぎありません。

 このように考えるならば、既に秋篠宮殿下や悠仁親王がいらっしゃる以上、女性天皇は必要ではありません。万が一、皇室典範が改正され、愛子様が天皇になられたとしたら、これまで皇嗣と定められ、そのようにお振る舞いになられてきた秋篠宮様や、その次の代の天皇と定められてきた悠仁様のお立場はどうなるのでしょうか。また、上記の理解の下、皇室を尊敬してきた国民感情はどうなるのか。混乱しないでしょうか。万が一、継承順位が変更されるようなことがあれば、皇位継承を巡って国論は大きく分裂してしまうことでしょう。

 さらに、令和2年秋には、今上陛下のご即位に伴う立皇嗣礼が行われ、「次の天皇は皇嗣、秋篠宮である」旨、天皇陛下が内外に宣言されています。それゆえ、「愛子様を天皇に」という主張は今上陛下のお言葉にも反することになります。

世論調査の罠

――とはいえ、憲法一条には、天皇の地位は「日本国民の総意」に基づくと定められています。そして各種世論調査では「愛子様を天皇に」という声が少なくありません。

「世論調査の結果」と、憲法にいう「国民の総意」とは別です。憲法一条にいう「日本国民の総意」については、単に「日本国民の意思」とみる説もあれば、「過去から現在そして未来へと続く日本国民の総意」と解釈する説もあります。

 いずれにせよ、少なくとも「日本国民の総意」と、移ろいやすい「世論調査の結果」とは全く異なります。国民世論がいかにその時代の一次的な状況に左右されるものであるか、それゆえ移ろいやすいものであるかは、かつての愛子様バッシングや、現在の秋篠宮家バッシングを見れば明らかでしょう。「世論調査」を根拠とする「愛子天皇論」は支持することが出来ません。

 確かに世論調査では、女性天皇・女系天皇の支持は70~80%に達しています。しかし、上記に述べた女性・女系天皇の意味について、正しく理解されているかどうか、不安な面もあります。

 例えば、令和元年10月21日のNHKの世論調査で、女性天皇、女系天皇への賛成は、それぞれ74%、71%もありましたが、「女系天皇の意味を知っているか」との問いには、「知っている」が42%、「知らない」が52%という結果でした。もちろん世論調査の結果は重要ですが、それを過度に、必要以上に重要視することには弊害もあると思います。

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