話題の「年収1000万のタクシードライバー」はごくわずか…日本で「ブルーカラー・ビリオネア」が誕生しない“当然の理由”
日本がデジタル化に遅れた理由
もう一つ、アメリカで「本物のブルーカラー・ビリオネア」が仮に誕生したとしても、日本では同じような形で起き得ないと言える理由がある。それは、日本のデジタル化やAIの浸透が、かなり遅れているからだ。
アメリカにおける、AIによる雇用代替の早さは目を見張るものがある。三菱総研の研究によると、ChatGPTがリリースされた22年11月以降、アメリカではマーケティング調査、グラフィックデザイン、プログラミングサービス、書類作成サービスなど、生成AIが得意とする情報収集や言語・画像生成等のタスク比重が大きい業種の雇用がすでに減少傾向にあるという。
実際に昨年5月、マイクロソフト社が雇用削減した2000名のうち、4割がソフトウエアエンジニアで、一部はAIによる代替が理由だとされている。
日本でもAIは国民レベルに浸透はしているものの、業界の雇用が揺さぶられるほどの台頭には至っていない。一部の省庁ですらいまだにFAXを使用しているのが現状だ。こうしてホワイトカラーの現場にまだまだ雇用が必要な状態が続く以上、ブルーカラーへ転職しようと考える人は決して多くはないはずだ。
そもそも、なぜ日本はデジタル化が遅れたのか。
それには、高度経済成長期から乱高下した「労働人口の動態」が関係している。世界が一気にデジタル化した1990年代後半、日本はあえてその波に乗らず、効率化を図ることをしなかった。その理由は「労働人口の余剰」にある。戦後、引き上げ兵の帰還や終戦による社会的安定によって、1947~1949年に第一次ベビーブームが起きたことで、日本の人口は急増。高度経済成長期は仕事がいくらでもあったため、人手は常に足りない状態だった。
1990年代になると、第一次、第二次ベビーブーム(1971~74年)どちらの世代もが、生産年齢人口(15~64歳)に突入。1995年、8700万人でピークを迎える。しかし、1991年に起きたバブル崩壊により、日本の経済は低迷し始めていた。そう、人手が余り始めたのだ。
「デジタルの波」が世界に到来したのは、奇しくもそんなタイミングだった。
1995年、Windows95の発売前日、店前にできた長蛇の列を思い出す人も少なくないだろう。このムーブメントによって、世界は一気にデジタル化に動いた。ところが、日本ではその動きが鈍かったのだ。その要因は他でもない。「労働人口の余剰」にある。ただでさえ人が余っている状況下、「デジタル化」など進めれば、より人が要らなくなってしまう。
世界でも稀に見る「終身雇用制」を取る日本。経済が停滞するなかでも、雇用は維持し続けなければならなかった。
ちなみに当時、なんとか経済を活性化させようと政府が始めたのが「規制緩和」だ。そのうちの一つに「労働者派遣法」がある。2004年には、製造現場への派遣も解禁され、日本のものづくり技術の低下や、現場の非効率化の大きなきっかけになった。
こうして経済が停滞する負のループに陥った日本。デジタル化を遅らせ、人件費を抑え続けた結果、生活が苦しい国民と、デジタル化が遅れた企業のもと「失われた30年」が構築されたのだ。
[2/4ページ]


