浮気がバレて妻が出て行った…息子たちの世話はどうする? 「それなら私が」 “不倫デリバリー” が招いた41歳夫の修羅場

  • ブックマーク

イチかバチかで…

 その日、みんなで遅いランチをとって別れた。彼はすっと彼女の横に立って歩き始めた。同じことを考えていたらいいんだけどとつぶやくと、彼女は唇だけで笑った。彼を見る目が潤んでいた。

「ここが勝負。彼女の麻雀じゃないけど、イチかバチかでした。冷たくフラれたら、それはそのときのこと。僕の人生でいちばんの大勝負だったかもしれない」

 タクシーを止めると彼女が乗り込んだ。そのままホテルへとなだれ込む。思ったとおりの女性だった。彼は攻められて守勢に回った。だが適度なところで彼が攻め始めると、彼女が受け止める。体と言葉で激しいラリーをし、疲れ果てて体を離す。だが、またどちらからともなく肌を合わせた。

「私たち、似てるねと彼女がつぶやきました。僕もそう思っていた。僕はあなたほどの知性はないけどと言ったら、『人は知性じゃないの。感性と知恵と工夫、それを組み立てる地道な努力』と彼女。すごいこと言うなあと思っていると、『仕事を一緒にしているとき思ってた。あなたには感性も知恵も工夫する力もある。人の気持ちを察する力がすごい。いい先輩だと思った』って」

溺れたわけではない…「敬意と信頼です」

 麻香さんに溺れたというのとは違うと彼はいう。彼女から発せられる言葉に心が豊かになったり、明日への活力がわいてきたりするのだと。恋愛感情だけで道ならぬ恋は続かないと。

「敬意と信頼ですかねえ。もちろん僕は、妻の真未に対しても敬意を抱いていましたよ。子どもふたりを育てていくのは大変なことだし、妻は僕が遅くなっても文句も言わない。僕もまめに連絡を入れていたし、早く帰れるときは子どもたちのめんどうを見ていました。自分の子ですから当然だと思っていたし」

 妻と麻香さんを比べたりはしなかった。ただ、麻香さんの存在に、その人生に巻き込まれたかった。一緒に歩くというのとも微妙に違う。

「麻香は独身だったけど、僕に家庭があることを知っていながら、まったく言及してこなかった。次に会う約束すらせず、その日は別々の電車に乗って別れました」

職場で会うと…

 だが悠樹さんの心の中では、麻香さんの存在がどんどん大きくなっていく。このまま関係を続けたらいけないとわかっていながら、自制はできなかった。

「僕の部署と研究所は仕事でも関係があるので、数日後、研究所に行ったんです。あの日から、彼女は連絡してこなかった。僕も控えていた。でも研究所で顔を見たら、膝からくずおれてしまったんですよ、みんなの前で。彼女に『どうしたんですか、先輩』と笑われて、『いや、ちょっと膝かっくんしちゃって』と言ったら周りが笑っていました。でも彼女の上司にあたる僕の同期が、『おまえ、血圧大丈夫か』と言いだして。計測したら確かに血圧と心拍数が上がっていた。まあ、でも倒れるほどのことはないなと彼が言ったので、いつもならエレベーターを使うんだけど、階段登ってきたからと必死で言い訳をしました」

 そんな彼を彼女はじっと見つめていた。その日の夜、彼は残業と偽って、ひとり暮らしの彼女の部屋に行った。彼女が「部屋に来て」とメッセージを送ってきたからだ。

「この関係の行く末とか、そんなことは何も話さなかった。ふたりとも情熱の発露だけを求めていたんだと思います。そして、そういう関係が続いていくんだと言葉にしなくてもわかりました」

 頻繁に会う必要はない。甘い言葉のやりとりもいらない。だけどふたりはいつでもつながっている。会わなくても相手の気持ちがわかる。そんな思いでいっぱいだった。それを一般的には「恋」といい、こういうケースでは「不倫」というのだが、悠樹さんは「とんでもなく高尚な関係」だと思っていた節がある。どんなに本人たちの意識が高くても、世間からみたら「ありふれた恋」なのだ。もちろん、それでいいのだけれど。

次ページ:「アサカって誰?」

前へ 1 2 3 4 5 次へ

[2/5ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。