「日本の不動産価格はこれからも下がらない」 中国人が「日本は割安」と断言して「逃資(とうし)」するこれだけの理由
内巻(ネイジュエン)
「上海でマンションを買うのと同じ金額で、東京なら2部屋、福岡なら3部屋買えます。アメリカも魅力的ですが、自分たちの親も歳をとってきているから、いざという時にすぐ帰れる距離の日本の方がいいです。マンションを持っていれば、いちいちホテルを取らなくてもいつでも気軽に行けるから、マンションの所有権は日本に行く入場券のようなものです」(ドン氏)
ドン氏が教えてくれた中国語で印象に残っている言葉がある。
「内巻(ネイジュエン)」。6年前に大流行したそうだ。「内巻」とは、競争が激化する中で死ぬほど努力しているのに誰も豊かさや成果を感じられない消耗戦状態を意味する。自虐的なニュアンスもあるそうだ。
14億人が住む中国では生まれた時から生存競争が始まる。朝10時から夜10時まで勉強していい大学を目指す。大学を出ても就職できるとは限らない。若者の失業率は表向き約20%と伝えられるが、実際には50%を超えていると聞いた。若者が就く職業はウーバーなどの配達員が多いという。確かに街中にバイクの運転手がいた。配達員の目印である、オレンジ色のジャケットを着ているのでよく目立った。
2022年に実施された完全ロックダウンにより、外に出ずに買い物も食事も配達で済ませる習慣が上海市民にこびりついてしまった。「一歩も外へ出られない」という強制力がどれほど強力なものだったのか、想像して私はゾッとした。
日本人に対する印象は
マリオットホテルの正面玄関にさえ、配達員がお弁当などを置き配する棚が設置されていた。
タクシーに乗ると、運転手が「観光客なんていないよ」と吐き捨てるように言った。上海では、家がなくタクシーに寝泊まりするホームレス運転手が増えたため、車内が臭いことが社会問題になっていた。
ドン氏は日本にマンションを購入して移住することを「過酷な競争から子供を守るためでもあり、健康と心の充足を得るためです」と話した。政府や政策に翻弄される人生を選ぶか、日本に来て自由と安らぎを得るか。「逃資」の人々とは異なり、「安寧」を求めて国を変える人々がいることを知った。
購入者の中心にいる中華系の人々は、誰よりもニッポン不動産の魅力を知っていた。そしてその価値を信じていた。私たち日本人はこれをどう捉えたらいいのだろうか。日本、特に東京の不動産がグローバルなものになっていることは間違いない。そして世界から見たらそれはとても安いのだ。
国内では「中国人に不動産を売るのはけしからん」という傾向が強まり、排他的な言動や運動を見かける場面もある。しかし私が会った中国人たちは皆、「日本人は親切。他の国と比べたら考えられないくらい優しいです」と話した。
こうした人々が東京のマンションを買い続ける以上はマンション価格が下がるようには思えない。






