「ふたりで死んじゃおうか」49歳夫はナイフを手に…“運命の恋”は皮肉な結末で終わるのか

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【前後編の後編/前編を読む】妻への贈り物を買いに行ったら“店員と客”以上の関係に…「これは運命だ」49歳夫が舞い上がった細かすぎる共通点

 森永正貴さん(49歳・仮名=以下同)は、「デキ婚」した妻の春佳さんと幸せな家庭を築いていた。だがあるとき“運命の人”瑠美さんと出会ってしまう。正貴さんが既婚者であることを知りながらも、瑠美さんは彼を受け入れ、二人は不倫の仲に。1年続いたその関係には、家族への罪悪感がつきまとい「天国と地獄を行き来するよう」だったと正貴さんは振り返る。そんな日々に耐えられなくなった2人は、話し合いの末に別れを選ぶ。瑠美さんは正貴さんの前から姿を消し、彼は新たに生まれた息子を含む家族と向き合って生きていこうと決意をしたのだが――。

 ***

 息子が産まれてすぐ、娘が小学校に入った。年の差があるせいで、娘は弟を非常にかわいがっていた。

「甘えん坊だった娘が、自分も納得した上でどんどんお姉ちゃん気質になっていった。ときには僕らより先に、息子が何を求めているかわかっているのには驚きました。僕自身はあの衝撃的な恋からなかなか立ち直れなかったんですが、それでも家族はまた絆が強くなった。それは感じていました」

 このまま落ち着いた生活を送ろうと彼は決めた。職場の和につとめ、ときには地元のお寺で早朝おこなっている写経の会に参加したりもした。自分の心を静めるためならなんでもしたと彼は振り返る。

 忙しい日々だったが、家族でよく出かけた。娘との会話も心がけた。仕事と家庭があれば自分は満足だ。そう思えるようになった自分がうれしかった。ところが、娘が高校生、息子も小学校高学年になったころ、ばったり瑠美さんと再会してしまう。

2時間後の“待ち合わせ”

「いつもなら絶対に乗らない郊外の私鉄に乗ったとき、なんだか視線を感じたんです。ふっとそちらを見ると、瑠美が立っていた。どのくらい見つめ合っていたかわからない。おそらく時間にしたら数秒なんでしょうけど、永遠に感じるくらい長かった。お互いに一歩ずつ近寄っていきました。いつかどこかで再会するということは予想していませんでした」

 仕事があるから2時間後にこの駅の改札で会えないかなと言うと、瑠美さんは静かに頷いた。彼女の携帯電話の番号はすでに削除してある。別れるとき、一緒にお互いの電話番号を削除したのだ。今回、会えなければそれも運命だと彼は思った。

「会えました。彼女があれから結婚したことも知りました。でも子どもはできなかったと。12年ぶりでした。それなのに言葉を交わしたとたん、久しぶりだと思えなかった。あの日の続きがここにある。そう思った。僕らはやはり一緒にいるべきなのではないか。僕は必死に自分を立て直して、落ち着いた生活をしていたけど、それはそうすべきだと思ってしてきたことで、本当の自分は彼女をずっと求めていたんだとわかってしまった」

 やっぱり瑠美と一緒にいたい。そう言うと瑠美さんの目からぽろりと大きな涙がこぼれ落ちた。それを見て正貴さんも泣いた。

「彼女がか細い声で、『でも、ダメ。人としてダメ』と言ったんです。それを聞いたら、『もういいよ、止められない。どんなに自分の気持ちを止めてもこうやって会ってしまったのが運命なんだ』と彼女の手に手を重ねました。ぽろぽろと涙をこぼす彼女が愛おしくてせつなくて」

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