合格したのに通えない…私立中の不登校は“統計以上”に深刻 受験競争が残す3つの後遺症

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もっとも深刻な「自尊感情とコミュニケーション能力の欠如」

 最後の3の「自尊感情とコミュニケーション能力の欠如」は、もっとも深刻だ。

 受験勉強をする中でたくさんの傷つき体験をしている子供は少なくない。親から「なんでできないの!」「努力が足りない」「もう知らない。勝手にしなさい」と罵られたり、塾の生徒たちがくり広げる「あいつは~~クラスだからバカ」「あいつは第一志望を落ちたらしい」といったマウント合戦に巻き込まれたりする。

 その結果、彼らは自尊感情を傷つけられ、たとえ受験に合格しても「自分は劣った人間なんだ」「がんばってもこれ以上は無理なんだ」と自己否定感を抱えてしまう。そういう子が、中学に入って新たな競争にさらされた時、自己否定感ゆえにその場から逃げ出すとか、自傷行為をするといったことが起こる。

 これも先のフリースクールの代表の言葉だ。

「受験の中で傷つけられた子供はすぐにわかります。二言目には『私は第一志望落ちたから』とか『うちの親は頭の悪い私のこと嫌いだから』と否定的な言葉を発します。女の子の場合は、自傷行為をしているケースも少なくありません。こういう子たちは、勉強だけでなく、クラスメイトや先生とうまくやっていけず、ちょっとした挫折から学校へ行かなくなってしまうのです」

 こういう子の場合は、自尊感情を一から再形成していかなければならないので、回復まで時間を要するという。

 ここまで3つの形で私立・国立中学における、教育虐待に関連する不登校の問題について見てきた。同じことは、高校の不登校においても一部重なる部分がある。そこにどういう問題があるか、詳しくは漫画『教育虐待』を参考にしていただきたい。

 子供にとって学びは一つの権利であり、努力によって高みを目指す受験は決して悪いものではない。ただ、親や大人の意向によって行き過ぎた場合、逆に子供の未来を阻害するものとなってしまうこともある。

 現在起きている私立・国立中学における不登校の増加という現実は、そのことへの警鐘といえるのかもしれない。

石井光太(いしい こうた)
1977年、東京生まれ。2021年『こどもホスピスの奇跡』で新潮ドキュメント賞を受賞。主な著書に『遺体 震災、津波の果てに』『「鬼畜」の家 わが子を殺す親たち』『43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層』『ルポ 誰が国語力を殺すのか』『教育虐待 子供を壊す「教育熱心」な親たち』など。『ぼくたちはなぜ、学校へ行くのか。マララ・ユスフザイさんの国連演説から考える』など児童書も多い。『ルポ スマホ育児が子供を壊す』(新潮社)はロングセラーとなっている。

デイリー新潮編集部

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