「はしご車」が届くのは11階までが限界… 知られざる「タワマン火災」の実情
東京消防庁が所有しているはしご車は計86台
都内全域の「はしご車の配備数」は、都市構造の制約を如実に物語っている。
2026年3月5日時点で、東京消防庁が所有しているはしご車は計86台。その内訳は以下の通りだ。
・40メートル級:8台
・30メートル級:75台(全体の87%)
うち、30m級 69台/先端屈折式 3台/大量救出型(車いす対応)3台
・空中作業車(26m):3台
さらなる高層化が進む東京で、なぜより長いはしごを持つ車両が主力にならないのか。そこには道路幅員や車両重量の制約、そして「30メートル級こそが都内で最も機動力に優れた最適解である」という事情がある。
はしご車は現場到着後にアウトリガーと呼ばれる支柱を展開し、車体を固定する必要がある。しかし、都内の道路の多くは幅員が限られ、40メートル級の大型車両は展開スペースの確保に時間を要してしまう。狭い生活道路が多い東京では、すべての現場に迅速に進入できるとは限らないのだ。
その結果として、都市部の道路条件に適応しやすく、より多くの現場に機動的に対応できる「30メートル級」のはしご車が主力として配備されているのである。
10エリアに分かれる「消防方面本部」
はしご車の配備状況を見る上で前提となるのが、東京消防庁の「消防方面本部」という区域区分である。
都内は第1方面から第10方面までの10エリアに分けられ、それぞれが複数の消防署を統括し、広域的に消防力を運用している。はしご車などの装備もこの「方面」単位で配置・運用されている。特定の区やマンション専用に常駐しているわけではないのである。
都内にわずか8台(23区内は6台)しか存在しない「40メートル級」のはしご車。この希少なリソースの配置図は、「都市全体で消防力を配分する」という行政上の都合を浮き彫りにする。
次図はその「40メートル級」はしご車の方面別の配置状況である。
【主要方面別の40メートル級はしご車・配備数】
・第1方面(千代田・中央・港):2台
・第7方面(江東・墨田・葛飾・江戸川):2台
・第3方面(目黒・世田谷):1台
・第4方面(新宿・中野・杉並):1台
・第2、5、6、10方面:0台
タワマンの密集する第1、第7方面ですら40メートル級は各2台しかない。それ以外の多くの地域に至っては「ほぼゼロ」に近いのが実情だ。
つまり、40メートル級は「どこでもすぐ届く装備」ではなく、広域の中で必要に応じて投入される限られた資源なのである。
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