あなたも亜鉛不足かも 欠乏状態のサインと、取るべき食事は? 「亜鉛を取っても吸収を妨げる食品が」
糖質、脂質、タンパク質。言わずと知れた、三大栄養素である。だがそれ以外で、いま医療界で注目されている栄養素がある。亜鉛だ。とりわけ高齢者にとって、若々しさを保つためには亜鉛の適切な摂取が必要不可欠。そのすごい健康効果と上手な取り方を解説する。【児玉浩子/帝京平成大学健康科学研究科健康栄養学専攻特任教授】
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今や60代、70代、80代といっても、みなさんとても若々しい。その年代の昔のイメージと違って、アクティブに、好奇心豊かに、活動されている方が多いように思います。人生100年時代という言葉を出さずとも、「まだまだこれから」と楽しい計画をたくさん立てている方は少なくないことでしょう。
そこで、提案したいことがあります。人生を元気に謳歌(おうか)するために、免疫力を高める亜鉛の摂取をぜひ心がけてほしいのです。気持ちや見た目が若くても、病気に勝つ力、すなわち免疫力は若い時よりも確実に落ちています。「最近、風邪をひくと治りにくい・悪化しやすい」と思ったことはありませんか? それはウイルスや細菌への抵抗力が低下しているため。ちょっとした風邪から肺炎に至り、命に関わることは高齢者では珍しくありません。「つい先日まで元気だったのに、まさか」ということが、わが身に降りかからないとはいえないのです。
〈こう話すのは、2018年発行の「亜鉛欠乏症の診療指針」で作成委員会委員長を務めた児玉浩子医師。帝京平成大学健康科学研究科健康栄養学専攻特任教授の児玉医師は、亜鉛をはじめとする微量元素の専門家だ。
亜鉛欠乏症の診療指針は昨年1月、7年ぶりに改訂版(「亜鉛欠乏症の診療指針2024」)が発行された。亜鉛に関する注目度は医療界で近年高まっており、一般人のわれわれも、今押さえておきたい栄養素である。〉
牡蠣を毎日食べられればいいが……
瀬戸内海の養殖牡蠣(かき)が大量死――。今年度の真牡蠣シーズンは、ショッキングなニュースで始まりました。生産者さんや関連業者さんの無念を思うと胸が痛みます。そんな状況はありつつも、冬の牡蠣は本当においしい。生でよし焼いてよし蒸してよし。牡蠣鍋、牡蠣フライ、牡蠣ソテー……想像するだけで、牡蠣好きは笑顔になることでしょう。そんな牡蠣には、他の食材にない特徴があります。私たちが生きていく上で欠かせない栄養素、亜鉛が豊富に含まれているのです。
牡蠣の亜鉛の含有量はダントツです。亜鉛は肉類にも多いのですが、標準的な1食分で比較すると、牡蠣は、わずか4個(約70グラム)で9ミリグラム以上の亜鉛を摂取できるのに対し、肉類の中で2番目に多い豚レバー(80グラムあたり亜鉛5.5ミリグラム)に大差をつけ、さらに、ヘルシーなイメージのある牛や豚の赤身肉(80グラム)と比べても、その差は2倍以上になります。
“亜鉛の王様”という異名があるのも納得。そんな牡蠣を毎日食べられれば、亜鉛の摂取量もある程度担保されることでしょう。しかし現実問題、あり得ない話です。では、肉類を日常的にたくさん食べる? 牡蠣に比べると実現可能に思えますが、同時に脂質も多く取ることになり、生活習慣病のリスクが高まる心配があります。高齢になると肉料理を重たく感じ、それほど食べたくなくなるという問題も生じます。
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