あなたも亜鉛不足かも 欠乏状態のサインと、取るべき食事は? 「亜鉛を取っても吸収を妨げる食品が」
体内で作り出せない
そもそも亜鉛って、摂取を意識しなければならないの? そんな声も聞こえてきそうです。私は確信を持って「はい」と答えます。亜鉛が不足すると、体内にある300種類以上の酵素が正常に働けません。免疫機能、味覚、生殖機能、タンパク質やDNAの合成、細胞の成長や分裂の促進などに不具合が生じます。赤ちゃん、子どもから高齢者まで亜鉛不足への対策を徹底してほしい。
高齢者では、亜鉛不足による免疫機能の低下は感染症をはじめとする病気のリスクを高めますし、味覚の異常は食欲低下を招き、サルコペニア(加齢などで筋肉量と筋力が落ち、身体機能が低下した状態)やフレイル(虚弱)につながります。
生きていく上で不可欠な存在である亜鉛ですが、体内で作り出すことができません。食品などから摂取するしかないのです。加えて、亜鉛の吸収率は摂取した分の約30%に過ぎません。肝臓病、慢性の炎症性膵疾患などの病気、薬の長期服用があれば吸収率は一層悪くなり、糖尿病や腎臓病があれば、尿からの排泄が増加します。また、一緒に取る食べ物によっては腸管からの吸収が妨げられることも分かっています。
推奨量に到達する難しさ
さて、ここで質問です。みなさん、今朝は何を食べましたか? もしパンとコーヒーでしたら、パンで取れるはずだった亜鉛の吸収をコーヒーが妨げているかもしれません。白米と納豆と卵であれば、単純計算で亜鉛の量は合計2.4ミリグラム。しかし玄米ご飯だったら、体内に吸収される亜鉛は大幅に減少しているでしょう。
1日に推奨される亜鉛の摂取量は、成人男性9~9.5ミリグラム、成人女性は7~8ミリグラム(厚生労働省「日本人の食事摂取基準〈2025年版〉の策定ポイント」より)。何も考えずに食事をしていれば、推奨量に到達するのは容易ではありません。昨年1月に発行された日本臨床栄養学会の編集による「亜鉛欠乏症の診療指針2024」では、少くとも日本人の10~30%が亜鉛欠乏状態にあると推定されています。
亜鉛欠乏症は、亜鉛の不足によって多様な症状が現れる病気のこと。診療指針では亜鉛の血中濃度の基準を数値で定め、それよりかなり低い状態を亜鉛欠乏症、そこまではいかないが低い状態を潜在性亜鉛欠乏と定義しています。亜鉛の血中濃度が低く症状がある場合は、亜鉛の薬を投与する治療の対象になります。
最新版の診療指針では、症状がなくても糖尿病であるなど一定の条件に該当すれば亜鉛治療を検討することとなっています。亜鉛の血中濃度は低いが症状が見られないケースへの亜鉛投与の効果が証明されつつあるからです。
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