あなたも亜鉛不足かも 欠乏状態のサインと、取るべき食事は? 「亜鉛を取っても吸収を妨げる食品が」

ドクター新潮 ライフ

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なぜ日本人の亜鉛欠乏率が高い?

 亜鉛の摂取量に関する興味深い三つの研究結果を、順天堂大学の横川博英先生らが発表しています。

 まずは、亜鉛欠乏症の“予備軍”が少なからずいることを示したものです。人間ドックを受けた2056人の亜鉛の血中濃度を分析したところ、潜在性亜鉛欠乏が男性で半数近く、女性で4割を占めていたのです。人間ドックを自ら受けに行っている方たちなので、「健康意識が高め」と推測できます。不調があれば人間ドックではなく外来受診を選ぶでしょうから、「健康な人」ともいえます。

 次に、新型コロナウイルスに感染し、順天堂医院に入院した成人患者さん467人の亜鉛の血中濃度を分析したものです。亜鉛欠乏はコロナの重症化と有意に関連しており、重症レベルが上がるにつれて、亜鉛の血中濃度が低下する逆相関関係が認められました。

 さらに、病気を持つ人にどれくらい亜鉛欠乏症がいるかを調べたものです。レセプトデータを用いて、全国の急性期病院で治療を受けた患者さんのうち、亜鉛の血中濃度が確認できた1万3100人を調べたところ、約3人に1人という高頻度で亜鉛欠乏症が見られました。また、肺炎、慢性腎臓病、褥瘡(じょくそう・床擦れ)、サルコペニア、新型コロナが亜鉛欠乏症の関連要因で、60代以上では、男女共に年齢が上がるにつれ、亜鉛欠乏症の割合が増えていました。

 これらの結果から推察できるのは、「一見、健康でも亜鉛不足の可能性がある」「感染症の重症度または一部の病気は、亜鉛欠乏症と関係しているかもしれない」「年を取るほど亜鉛が欠乏しやすいかもしれない」ということ。

 亜鉛の血中濃度を調べた研究はほかにも複数あり、世界のデータと比較すると、日本人の亜鉛欠乏率は高めです。その理由としては、以下の四つが考えられています。(1)人口に占める高齢者の割合が高い(=食事量が少ない、加齢で亜鉛吸収率が低下、慢性病を抱えている)、(2)亜鉛の吸収を低下させたり排泄を促したりする慢性病(肝臓病、糖尿病、腎臓病など)の患者さんが多い、(3)慢性病で薬を飲んでいる人が多い(=薬には亜鉛の吸収を阻害するもの、排泄を促すものがある)、(4)欧米人に比べて肉類を食べることが少ない。言い換えると、(1)~(4)を見て「自分もそうだな」と感じる点が一つでもあれば、亜鉛が不足していると考えた方がいいでしょう。

具体的な食品名

 今日から実践していただきたいのは、日々の食事で亜鉛の摂取量を高める工夫です。ポイントは四つです。

【“チリツモ方式”で取る】

 亜鉛が豊富な食品を挙げると、牡蠣をはじめとする貝類、肉類(中でも赤身やレバー)、サバやイワシをはじめとする魚類、チーズ、納豆、高野豆腐、ココア、ゴマ、ナッツ類、ワカメ。ただ、ご飯やパン、野菜やキノコ類は食べる頻度と量が多いため、意識せずとも亜鉛を取れます。いろんな食品を満遍なく食べて、“チリツモ方式”で亜鉛の摂取量を増やしていきましょう。パンを食べるならチーズトーストに。ご飯にはカツオ節やゴマをかけて。ほんのちょっとのプラスαでも亜鉛の摂取量は変わります。

【タンパク質を意識する】

 亜鉛は動物性食品に比較的多く含まれています。動物性食品といえば、タンパク質が豊富。タンパク質を意識して食の献立を考えれば、亜鉛も摂取できます。タンパク質は、高齢者でリスクが増すサルコペニア、フレイル対策にもなるため一石二鳥です。

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