「春、花粉を回避する街」の資産価値 「こんなに違う」東京23区に潜む「花粉格差」のメカニズム

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巨大都市を貫く「花粉の回廊」

 花粉は空から一様に降り注ぐのではない。風に乗り、地形を這う「粒子の流れ」だ。

 主要都市の観測データを見れば、その挙動は一目瞭然である。多摩のスギ林を源流とした「花粉の大河」は、春の西風に乗って都心を縦断し、東の海へと抜ける。その過程で明確な「濃度の勾配」を描くのだ。

 発生源に近い杉並・練馬といった「風上」の住宅街は、シーズンを通して高い数値に晒される。一方で、そこから都心を挟んだ東側に位置する墨田や江東のエリアでは、飛散量がぐっと少ないのがわかる。

 ウェザーニューズ(WNI)の観測値によれば、杉並区と江東区では飛散量に最大で「約5倍」もの開きがある。環境省の年次データにおいても地点間で数倍の開きが確認でき、同じ都内でも居住地によって「吸い込む花粉の総量」が異なることが分かる。アレルギー疾患においては、「累積の花粉曝露量が増えるほど、発症率や症状が重くなる(量反応関係)」ことが臨床研究で報告されており、花粉症に苦しむ人にとってこの数倍規模の“格差”は無視できない。

 この“格差”は、大阪圏や名古屋圏でも同様に表れる。大阪では生駒山地に近い東側が直撃を受ける一方、ベイエリアでは飛散量が抑制される「東高西低」の形に。名古屋でも山間部からの距離が飛散量に大きな影響を与えている。

 同じ都市、同じ鉄道沿線であっても、立地によってさらされる花粉の飛散環境は大きく異なる。これは個人の努力では変えられない、土地の構造に起因する格差といえる。

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