「お父さん、勝ったぞー!」K-1の番長から大金星で“愛娘を肩車”…安田忠夫さん「平成の借金王」の異名をとった波乱のプロレス人生

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「パチンコは最近何してる?」

 前述の通り、全日本プロレス入りが破談となった安田が、知り合いに紹介されたのが猪木だった。借金のことを話し、新日本プロレス入りしたいと訴えると、「ほぼ二つ返事で」(安田)了承されたという。モハメッド・アリ戦の不評で多大な負債を背負い、青少年のための施設用に貯めていた金は社員に流用されるなど、お金でのトラブルにはことかかなかった猪木。相次ぐ金銭トラブルで自殺を試みようとした時、(どうせ死ぬならライオンと戦って死のう。でも、そうすると、興行にした方が儲かるな)と思い、結局、自死を思いとどまった逸話は有名だ。

 借金問題で行方知れずだった安田をリングに呼び戻したのも猪木だった(2001年3月20日。安田のマイクでの第一声は、「生きてます!」)。冒頭の大晦日の試合で、ファイトマネーが猪木側と折半の形になっていた時は、安田も声を荒らげたというが、すぐに謝罪し、猪木との関係は続いたという。

「アメリカで総合格闘技の練習してた時は、現地で週2回以上は会ってたな。あの人は家にいたくないタイプだから(笑)」

 自殺未遂の5日後、猪木は安田への気持ちを書面にしたため、マスコミに公開している(2007年10月10日。「アントニオ猪木酒場」仙台店)。

〈(前略)安田の馬鹿め、ばか、ばか、ばかの馬鹿野郎、ばかにつづける言葉なく、おとした涙で字がにじむ〉

〈ばか安田 死んで行くこともできぬ奴 死んで花実が咲くものか(後略)〉

 後年も、「アイツ、食えてるのか?」と、よく安田を心配していた猪木。亡くなる約1週間前にはケンドー・カシンに、以下の電話をしたことが報じられている。

〈『パチンコは最近何してるんだ?』って。パチンコ? 安田忠夫のことです。それで『安田に会いたいんですか?』って聞いたら『うん』って〉(東京スポーツ・2022年10月3日付)

 最後に、安田が語っていた、猪木との食事の様子についても書いておきたい。

「食事してると、時々、キッとした表情になるんだ。そういう時は、ファンが周りにいるのを猪木さんが気付いた時。『アントニオ猪木』としての表情を作るわけだよ。まあ、カッコ良かったわな」

「それ以外の時は?」と筆者が水を向けた。安田は答えた。

「普通のおじいちゃんだったよ。『お前は、よく食うなあ』ってニコニコ嬉しそうに笑ってた」

瑞 佐富郎
プロレス&格闘技ライター。早稲田大学政治経済学部卒。フジテレビ「カルトQ~プロレス大会」の優勝を遠因に取材&執筆活動へ。現在、約1年ぶりの新著『10.9 プロレスのいちばん熱い日 新日本プロレスvsUWFインターナショナル全面戦争 30年目の真実』(standards)が重版出来中。

デイリー新潮編集部

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