東京地検特捜部はなぜ「インサイダー事件」を“初荷”に選んだのか? 予算成立後の“政界捜査”に注目が集まる理由

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予算通過のタイミングで

 一方で同OBはこう語る。

「特捜部では伝統的に、捜査が国民生活に悪影響を及ぼさないよう国会の予算審議期間中の政界捜査を手控える傾向にある。国会議員には会期中の不逮捕特権があるので、強引に逮捕するには国会の審議を止め、逮捕を許諾してもらう必要があるので、国会開会前に滑り込みで逮捕するか、衆院での予算案可決を待つことが多い」

 1月の政治家逮捕は、まさに滑り込みで政界捜査に着手した初荷の事例だ。法曹関係者は「現在の捜査事情を知っているわけではないが、高市総理の電撃解散は想定外だったはずなので、インサイダー以外に政界捜査を初荷として準備していた可能性はゼロではないのでは」と推測する。だが「若い頃は、イケイケの特捜検事として鳴らしていた法務省の森本宏事務次官は名古屋大初の検事総長が見えてきた辺りから、政界捜査への意欲が減退しているとの噂も耳にしたことはある」とも話す。

 同OBは「検事総長の椅子を巡っては、過去にもさまざまな思惑がからんだ人事抗争もあったので、一概には言えないが、東大以外からの総長が続くこと(畝本直美・現総長は中大卒、次期総長最有力の川原隆司・東京高検検事長は慶大卒)を快く思っていない人たちが、元検察幹部を含めた法曹界に一定程度いることは間違いない。『森本は自民党に睨まれることは絶対にしない』と陰口をたたく向きもある。“高市自民”が選挙で圧勝した今、東京地検特捜部が政権与党に切り込むことがあるのかどうか、気にはなる」と心情を語る。

 かつて「政界のドン」の異名を取り、政界を牛耳っていた金丸信元自民党副総裁を、特捜部は1993年3月6日に巨額脱税事件で電撃逮捕した。94年度予算案が衆院を通過した直後のことだ。来年度の予算案は今の特別国会での審議となったが、予算が成立した時、特捜部の政界捜査に動きがあるのか、ないのか――注目したいところだ。

岡本純一(おかもと・じゅんいち)
ジャーナリスト。特捜検察の捜査解説や検察内部の暗闘劇など司法分野を中心に執筆。月刊誌「新潮45」(休刊中)では過去に「裏金太り『小沢一郎』が逮捕される日」や「なぜ『東京高検検事長』は小沢一郎を守ったか」などの特集記事を手掛けた。

デイリー新潮編集部

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