憧れの街「港区白金」が廃墟になる… 人口減社会に逆行する拡大型都市「タワマン」再開発

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SDGsに反する最たるもの

 それなのに港区で再開発への動きがなおも過熱しているのは、現在、東京23区内のマンション価格が高騰を続けているからだろう。

 昨年、23区で発売された新築マンションの平均価格は、不動産経済研究所によると1億3,613万円で、対前年比で21.8%も上昇した。しかも、千代田、中央、港、新宿、文京、渋谷の都心6区にかぎると1億9,503万円をつけた。中古マンションの平均価格も、23区全体で前年とくらべ37%も上昇し、1億1,960万円となった。

 特に新築マンションは、冒頭で述べた建築コストの高騰があり、価格の上昇は避けられない面がある。しかし、この価格では一般の勤労世帯ではなかなか手が出ない。結局、外国人を含む資産家が投資や投機目的で購入するケースが多いようだ。国土交通省が発表したデータでは、23区内の大規模な新築マンションで、購入から1年以内に売却された物件が2024年1~6月までに575件に達し、前年同時期の5倍になるという。

 では、なぜ都心のマンションが投機対象になるのかだが、最大の理由は低金利にある。日本の金利はいまも物価上昇率よりはるかに低く、事実上のマイナス金利である。企業の借り入れ需要が増えない金融機関は、不動産購入者への(開発者に対しても)融資を増やしてきたので、高値で買う人が増え、業者は強気の値づけをするという悪循環に陥った。また外国人の投機筋には、低金利に加えて円安メリットもあり、日本人以上に日本のマンションを買いやすい。

 だが、すでに記したように、日本の人口は急激に減少する。いずれ日本が金利のある世界に戻り、一定程度の円高になれば、23区における不動産バブルも弾けるだろう。

 そもそもタワーマンションの住民は、周囲の戸建てや低層マンションの住民とは、意識や価値観が乖離しており、コミュニティの形成が困難だといわれる。また、首都直下型地震などの災害時の危険性も、ほとんど検証されていない。そうしたことを考えるのが、公共の福祉を目的とする地方公共団体のはずで、地方自治法でも、社会全体の利益と住民一人一人の人権を調整し、住民福祉を増進させるべく定められている。

 ところが、「白金一丁目東部中地区」を管轄する港区をはじめ、地方自治体は固定資産税や住民税の増収という短期的利益を優先して再開発に前のめりになり、将来における住民の利益を損ねている。

 港区もホームページを見ると、サステナビリティ(持続可能性)やSDGs(持続可能な開発目標)に力を入れているそうだが、すでに明らかなように、急激な人口減少社会における拡大型の都市再開発ほどSDGsに反し、持続可能性が低い事業はない。一刻も早く目を覚まさないと日本がもたない。

香原斗志(かはら・とし)
音楽評論家・歴史評論家。神奈川県出身。早稲田大学教育学部社会科地理歴史専修卒業。著書に『カラー版 東京で見つける江戸』『教養としての日本の城』(ともに平凡社新書)。音楽、美術、建築などヨーロッパ文化にも精通し、オペラを中心としたクラシック音楽の評論活動も行っている。関連する著書に『イタリア・オペラを疑え!』(アルテスパブリッシング)など。

デイリー新潮編集部

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