憧れの街「港区白金」が廃墟になる… 人口減社会に逆行する拡大型都市「タワマン」再開発

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業者はなにひとつ責任をとらない

 たとえば、麻布、高輪、広尾という高級住宅地に囲まれた白金一丁目地区。元来、町工場と住宅が混在していた地域で、いまも下町風の面影が随所に残っている。それだけにディベロッパーのターゲットにされたようだ。2005年に竣工し、高さ142メートルと116メートルの2つのタワーを中核とする「白金一丁目東地区」を皮切りに、長谷工コーポレーションが主体となって再開発を進めている。2023年には、156メートルと70メートルのタワーを擁する「白金一丁目東部北地区」の再開発も竣工した。現在、その両者にはさまれた「白金一丁目東部中地区」で再開発協議が進められている。

 同地区の再開発準備組合名でまとめられた(だが、長谷工コーポレーションが地権者のもとに届けた)「白金一丁目東部中地区開発コンセプト」には、次のように書かれている。「当該地区は白金エリアにおける『へそ』的な場所に位置しています/周辺でさまざまな再開発計画が進んでおり、それらの計画が完成すると、当該地区はほかの開発から取り残された場所になります/周辺の再開発の中で、この場所が白金エリアの中心として、まちの将来のためにどうあるべきかを考えることが必要です」

 筆者には、この地区の地権者に対する「脅し」としか読めない。だが、「まちの将来のためにどうあるべきか」を、前述した人口減少社会の未来像に照らして考えるなら、「ほかの開発から取り残された場所」になる以外の選択肢はない。

 ちなみに、「白金一丁目東部中地区」の周囲の再開発は、「白金一丁目西部中地区」が2028年、「三田五丁目西地区」が2029年に竣工予定である。さらに「白金高輪駅前東地区」が整備予定で、「白金一丁目西部北地区」でも協議が進められている。つまり、白金一丁目地区がすべて巨大なタワーマンションで埋め尽くされようとしている。

「東部中地区」で複数の飲食店を営む株式会社ビータスの川本一歩副社長がいう。

「再開発など必要がないのに、不動産開発業者が勝手に計画を立て、地権者を巻き込んでいるのが現状です。こうした再開発は、第一種市街地再開発事業として行われ、地権者が以前からもっている権利が新しいビル内に床を取得する権利に移し替えられます。開発の前提としては、土地の利用法などの条件が定められているのに、業者はべつに問題がない地域にも無理やり条件を当てはめます。たとえば、第1種開発の条件の一つに、“耐火建築物が3分の1以下”というのがありますが、すると木造の一軒家はどんなに新しくても耐火建築ではないので、それだけで土地利用が不適当な地域にされてしまう。その時点でおかしいんです。でも、業者は建てて販売したらお終いで、その後、町がゴーストタウンになろうと関係なく、なにひとつ責任をとってくれません」

 実際、事業を進める民間のディベロッパーなどは、現時点での営利を目的としており、建てたマンションを売り切ったあとは、地域の将来に一切の責任を負う必要はない。だが、大変なのはその後である。タワーマンションは修繕に費用がかかるので、一般に修繕積立金が高い。そのうえ大規模修繕や建て替えが必要になれば、積立金の増額が欠かせない。それについて入居者の合意が得られるのかどうか。商業ビルなら所有者の一元管理が可能で、それなら修繕や建て替えもまだしやすい。だが、分譲されたタワーマンションでは、入居者同士の合意形成は至難で、その人たちが高齢化すればなおさらである。結果として、廃墟になるリスクが非常に高い。

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