90歳女性を惨殺した「ルフィ事件」と07年「闇サイト殺人」に通底する“鬼畜の共通点”…アウトロー専門家は「人間は集団になると、どんな残虐な行為でも可能になる」

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 2023年1月、東京都狛江市の住宅に駆けつけた調布警察署の署員が目にしたのは、凄惨な暴力の痕跡が刻まれた90歳女性の遺体だった。女性は両手首を結束バンドのようなもので縛られ、頭部から血を流して倒れていた。司法解剖の結果、全身に打撲の跡が確認され、左肘は骨折、左腕は皮膚の一部が剥がれていた。殴られただけでなく足で踏みつけられていたことも判明した。(全2回の第1回:一部敬称略)

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 家の中では引き出しの中身が散乱しており、複数の犯人が強盗目的で侵入したことは明らかだった。ただでさえ強盗殺人は許しがたい凶悪事件だが、狛江市の犯行は文字通り鬼畜の所業。高齢女性に対する残虐極まりない暴力に国民の怒りが爆発した。

 実は千葉県警からの情報提供を受けて、調布署員は女性の自宅を訪れていた。千葉県警は大網白里町の強盗致傷事件で自衛官の男を逮捕すると、携帯電話に狛江市の住所が記録されていることを把握した。狛江市の強盗致死事件と大網白里町の強盗致傷事件における“点と線”がつながったことで、“ルフィ”広域強盗事件の全容が解明されていく。

 2月5日、“ルフィ”事件で特殊詐欺グループの幹部だった藤田聖也被告の裁判が東京地裁で行われ、検察は「社会に大きな不安と恐怖を与えた、過去に例のない凶悪で重大な事件」と断罪。無期懲役を求刑した。

 藤田被告は仲間と共謀して1都3県で7件の強盗事件に関与し、約1億円を強奪。被害者は死者1人、負傷者5人にのぼった。

「闇バイト」を利用した強盗事件の裁判や逮捕が相次いでいる。2月9日、強盗の実行役を担い、強盗致傷などの罪に問われていた26歳の男性被告に対し、埼玉地裁は懲役14年の判決を下した。

「闇バイト」の非道な暴力

 被告は他の男たちと共謀し、24年9月と10月に発生した2件の強盗事件に実行役として関与。男女2人にケガを負わせた。判決では個人情報を安易に指示役に送ったことや、警察に相談しなかったこと、そして報酬ほしさに強盗事件に関わったことが厳しく非難された。

 首都圏で闇バイトによる強盗が相次いだ事件をめぐっては、警視庁などによる合同捜査本部が2月6日、無職で20代の男4人を強盗致死と住居侵入の疑いで再逮捕したと発表した。

 2024年10月、男たちは横浜市青葉区の住宅で工具を使い、窓ガラスを割って侵入した。住人の70代男性に対して指示役が「暴力を振るえ」と命じると、男たちは顔や上半身を殴打。次第に男性は動かなくなったという。

 遺体で発見された際、男性は手と足を縛られ、口にテープを貼られていた。住宅からは現金約17万円やネックレスなどが奪われた。

 なぜ、凶悪非道な「闇バイト」による事件が全国各地で相次ぐようになってしまったのか──。その疑問に答えたのが『闇バイトの歴史「名前のない犯罪」の系譜』(藤原良著・太田出版)だ。

 著者の藤原氏は長年、反社会的勢力の取材を積み重ね、月刊誌などで多数の記事を執筆してきた。『山口組対山口組』、『三つの山口組』、『M資金』(いずれも太田出版)といった過去の著作でも一貫して、いわゆる“アウトロー”のリアルな生態を描き出してきた。

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