赤・青・黄・緑…「原色だらけの部屋」で始まった新生活 20代女性が気づいてしまった「食事中や入浴中、行為中の熱視線」【川奈まり子の百物語】

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ワケアリ物件

「心理的瑕疵があるか否かということでしたら、違います。名古屋は東京より多少お安くなりますし、それにまた、前のオーナーさんの趣味で、かなりユニークなお部屋になっておりますから……」

 では、さっそく中へ……と、室内へ案内されてみると、確かに、好みが分かれそうな部屋だった。

 随所に原色の赤や青、黄色、緑があしらわれていたのだ。

 たとえばダイニングキッチンは、ドアには鮮やかな赤が、床には真っ黄色の塗装が施されていた。

 寝室は天井以外、濃密な緑一色。浴室の壁とタイルは、真っ青で統一されていた。

 リエさんはこれを見て前のオーナーについて好奇心がそそられ、「どんな方だったのですか?」と担当者に訊ねた。

「ご年輩の独身男性でした。自営業だったようですが、それ以上のことは……」

 年輩と聞いて、彼女は、派手な家を東京に建てて物議をかもした、とある有名な漫画家の顔を思い浮かべた。強烈な個性の持ち主だったっけ……。

 この部屋の元オーナーも風変わりな天才かもしれない……。

「ちょっとお会いしてみたいな。その方は、ご存命なのですか?」

「いいえ。残念ながら」と担当者は答えた。

「お亡くなりです。そこで、ご遺族からここを買い取らせていただいた次第です」

「亡くなった? この部屋で、ですか?」

「いいえ! 救急搬送されて病院で死亡が確認されたと伺っております」

 尚、心理的瑕疵物件に関する国土交通省のガイドラインでは、今回のケースのように、たとえ屋内で倒れたとしても、救急搬送された後に病院で死亡が確認された物件は事故物件には該当せず、告知義務も発生しない。

 ただし、借り手や買い手から過去の人の死について質問された場合、事実を正確に伝える義務が定められている。

 さらに、搬送後に病院で死亡しても、特殊清掃が必要なほど室内が汚損していたり、自殺も含めて事件性が認められたりすると、告知対象となる可能性があるという。

 亡くなった元オーナーの死因および死亡時の部屋の状態が不明で、家賃が非常に安いことから、事故物件の疑いが若干残ってしまったが、リエさんは納得して、その部屋を借りることにした。

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