「バレンタインチョコ」から「恵方巻」まで…なぜ日本人は“商業主義の匂い”に敏感になったのか
一昔前は、1月下旬を過ぎるとバレンタインデー商戦が大いに盛り上がり、テレビCMや情報番組でも、その年のトレンドが大きく取り上げられていた。だが、バレンタイン商戦も含め、過度な商業主義への反発が高まっているのだろうか、ここ最近、いわゆる“記念日商法”を大々的にアピールするC Mや、そうした動きを賛辞するだけの報道は鳴りを潜めている印象だ。
SOMPOホールディングスが、総務省の「家計調査」と「消費者物価指数」から作ったデータによると、2月のチョコレート購入数量は2016年を100とすると、2025年は64ほどとなっている。義理チョコ文化の衰退や、原料となるカカオの高騰も原因に挙げられるだろう。だが、そもそも、この慣わしの起源が、消費低迷月である2月の購買意欲の喚起策として、某チョコメーカーが1958年に展開した、「大切な人にチョコを送ろう」と謳うキャンペーンであることも大きいのではないだろうか。【取材・文=中川淳一郎】
恵方巻の効果は728億円
日本には様々な「○○の日」が存在し、業界団体や企業は、隙あらば消費拡大を狙っている。「ポッキーの日」や「アイスクリームの日」といったのがその例だ。とはいえ、消費者からすると、これらは特に多額の出費は伴わないため、ちょっぴり楽しい気持ちになったりするぐらいでお祭りとしては歓迎できるものである。
だが、バレンタインデーは他の記念日とは訳が違う。「好きな人に贈る」という条件をつけたことで、人々の生活様式や、当日までの心の持ちよう、モテ・非モテに伴うコンプレックスにも影響を与えた。さらには「3月14日のホワイトデーは、3倍返しが当然」というよく分からないルール的なものまで生まれ、私自身はこの慣わしに苦痛を感じたものだ。
次に、2月の定番行事となった恵方巻について。関西大学の宮本勝浩名誉教授の試算では、2026年の恵方巻による経済効果は728億8138万円で、「過去に類がないような非常に大きな経済効果」なのだという。価格の高騰も経済効果に影響しているが、それだけ定着したともいえる。とはいっても、毎年、食品ロスが取り沙汰され、さらにはコンビニ店員が「ノルマを押し付けられた!」とSNSで悲鳴が書き込まれることも定番になっており、恵方巻を良く思わない人も少なからず存在する。
さて、バレンタインデーの盛り上がりが鈍化し、恵方巻については“食品ロス”のネガティブなイメージが払しょくできず、そこに2023年以降の急激な物価高が重なって、消費者はもはや「記念日商法につきあってられないわ!」といった状況になっているのではないだろうか。
クリスマスは1990年代前半までは恋人同士が高級ディナーを一緒に食べ、男が女にアクセサリーを贈り、その後は「シティホテルにチェーックイン!」という商業主義的イベントだった。バブルが崩壊した後も数年間はその流れが続いたが、ある時から「最近のクリスマスイブは恋人が慎ましくモツ鍋を食べる」という声も上がり始め、商業主義から脱却するようになった。
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