地元再訪の“過去への旅”でとんでもない事態に… 引きこもり兄の真相、出自の秘密、「離婚する?」と妻から言われて

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会社を辞めると告げたら…妻からのまさかの言葉

「そのあと、会社が早期退職者を募ったんです。会社を辞めてみようと思いました。美弥ちゃんにも相談して。実はそのころには美弥ちゃんとは男女の関係になっていました。人肌でしか埋められないものを抱えているような気がして、彼女が同情してくれたのがきっかけ。彼女も結婚しているから1度だけという約束だったんですが、やけに相性がよくて離れられなくなっていたんです」

 55歳直前で会社を辞めた。妻の彩菜さんには相談はせず、報告しただけだ。あまり動じないタイプの彩菜さんだが、会社を辞めることにしたと言った彼に、「離婚する?」と言った。

「思わず、え、どういうことと言ったら、『だって美弥さんとつきあっているのよね』って。動揺しました。ただの幼なじみだよとしらばっくれようとしたら、『美弥さんから連絡をもらったの。こっそりつきあうのは嫌なので』って。あの人も結婚しているのにリスクを怖がらないタイプなのかなと、彩菜はほとんど笑いながら言っていました」

 本当は妻に怒ってほしかったと晃平さんは言う。妻が夫を寝取られて笑っているのは愛がないと思ったそうだ。だがむしろ、愛があるから夫の自由を尊重したのかもしれない。浮気相手の美弥さんに悪意をもっていない意思表示かもしれない。善し悪しはともかく、彩菜さんも美弥さんも、自分の人生をまっすぐに生きている。

「彩菜の本意はわかりません。やっぱり僕は彩菜とも深い関係は作れていなかった」

 自分がどうしたら残りの人生を「まっとうに」生きていけるのか。晃平さんは考え続けた。その結果、今、彼は美弥さんの親戚が住職を務める寺に住み込んでいる。自宅に戻るのは月に数回だ。

「美弥とは人間関係は続いていますが、男女の関係はなくなりました。人生に情熱をもてなかった僕が、唯一、情熱を傾けた相手だったのかもしれない」

 割り増しになった退職金はすべて妻に渡した。彼はほんの少しの食費を払って、寺での生活を続けている。

「煩悩を断ちきることはできたけど、仏の道に帰依できるかどうかはわかりません。俗物ですから」

 大学生の息子は、ときどき彼に連絡をしてくる。息子は詳細を知らないが、あるとき晃平さんに「子どもだった僕を対等に見てくれるいい父親だったと思ってる」と言ってくれた。涙もろくなった晃平さんは、そのときも号泣し、息子に笑われた。いい子に育ったのは彩菜さんのおかげではあるが、美弥さんには「いい遺伝子残したわよ。それだけであなたが生まれてきた甲斐があったんじゃないの?」とあっさり言われたそうだ。そこから彼の気持ちが少し変わった。息子の将来を見るために、自分の未来も見たくなった。美弥さんの炯眼恐るべしである。

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 50歳にして自分の人生と向き合うことができた晃平さん。その結果、起きたことを考えると、それが良かったのか悪かったのかはわからない……。晃平さんが封印していた母の不倫の記憶は【記事前編】で紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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