かつて「喫煙所」は“第二の会議室”として扱われていた…30年で大きく変貌を遂げた“タバコと職場”の関係を振り返ってみる

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喫煙室文化の消滅

 さほど昔でもない時代にはそこまで喫煙者が大手を振っていたわけだが、今やその影はない。当時常にタバコを吸っていた人も遠慮をしているし、もはやタバコは吸わないと言いだしている。50代広告会社社員男性のA氏はこう語る。

「元々、仕事の雑談や簡易打ち合わせのようなことは会社の喫煙室で喋っていたのですが、これは男の文化でした。案外この時間で仕事の方針が決まったりしていたんですよ。だから有意義だと思われていたのですが、タバコを吸わない人からすれば『なんで喫煙者だけが長時間席を外していて許されるのですか?』となります」

 これは当然のことではある。「喫煙室で打ち合わせをしています!」と主張したいのだろうが、「いや、席やその辺の打ち合わせコーナーで話をしてもいいでしょ? そこにタバコが必要なんですか?」という反論の余地がない意見が出る。さらにはジェンダーの問題も出てきた。A氏が続ける。

「喫煙室の男文化で仕事が進む様子を見た少数派の女性もそこに加わるようになりました。彼女は、喫煙室で仕事が円滑に進む様を見ていると、その『喫煙所仲間』になろうとするのですね。元々その方はタバコを吸っていたのですが、『私も一緒に行きまーす!』なんてことを言いながら一緒に喫煙所に行く様を見た他の女性からは『男に媚びている』と批判されていました」

昔がおかしかっただけ

 一方で、男性社員が無理矢理タバコを理由に女性社員を喫煙所に連れ込んでいるといった批判が巻き起こるようにもなったのだという。そのため、ジェンダー平等の観点から、喫煙所での雑談が下火になり、そもそも喫煙室を廃止する会社も多くなった。そして、職場だけでなく、飲み会や会食の場でも喫煙者は肩身が狭くなっていった。飲み会好き男性B氏(50代)はこう語る。

「飲み会や会食の時、外へ喫煙に行くのがそもそも面倒くさくなりました。そして、喫煙のために5~7分ほど、それを2時間に3~4回もやるのは失礼だと感じ、タバコはやめました。一旦やめると決意すれば全然苦痛じゃないですね。オレは酒飲んでおけば幸せです」

 元々喫煙をする行為というものは「不良に見える」「大人の象徴」「アウトロー的」といった理由があった。本気でタバコを好きだった人がどれだけいるかといえば、ここまで値上がりした今でも吸い続ける人だけだろう。それ以外の喫煙者の多くは、あくまでも、自分をイケていて、ワルそうに見せるツールとしてタバコを使っていたのだ。

 タバコの煙を肺まで入れず、灰皿に置きっぱなしにし、さらには口をつけたとしても少し吸って「プハーッ」と吐く人間は大勢いた。これはタバコがイケてる人間の象徴かつ、不良の象徴だった時代の話。だが、今ではタバコを吸うこと自体がイケてる行為とは見なされづらい。単に「珍しい嗜好を持った人」扱いされているのかもしれない。

ネットニュース編集者・中川淳一郎

デイリー新潮編集部

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