「200kmを時速40km」列車の所要時間は?を“暗記”で解く子どもたち… 「数学嫌い」を招く誤った学び方
数学には分からない記号や式があるから嫌い
算用数字を用いて「524×263」を行うと、筆算で計算して答えの137,812が分かる。この掛け算をローマ数字で記述するならば、DXXIVとCCLXIIIの掛け算を表さなければならない。ちなみに
D=500、XX=20、IV=4、CC=200、LX=60、III=3
である。誰が見ても算用数字の方がはるかに便利だろう。
このように記号や式は、人類が長い年月をかけてつくってきた「曖昧でない、覚え易い、見易い」の3つの特徴をもつ。
友人と一緒にドライブに出掛けているとき、分からない道路標識が現れたら、恐らく友人に「あれ、あの標識の意味は何だっけ」と質問するだろう。要するに、分からないことは質問するだけである。
アメリカと日本の学生を比較して思うことの一つに、アメリカの学生は分からないことを無邪気に質問する一方で、日本の学生は余り質問しないことを美徳に思っている面もあるように感じる。
かつて全国各地の教員研修会での講演をお引き受けしていた頃、「勇気をもって分からない数学記号や数式の意味を質問してきた生徒に対して、間違っても『そんなことも知らないのか』とか『もう忘れちゃったの』と言わないで下さい」と度々訴えていたことを思い出す。
記号や式の意味を分からなくなったり忘れたりしたならば、遠慮なく質問して仕事や学習を効率的に進めればよいのである。
3桁同士の掛け算は電卓で行えばよい
1960年代後半から1970年代にかけて、電卓は一気に普及してきた。現在ではスマホにも電卓機能が付いている。そこで、
「おじいちゃんやおばあちゃんの時代と違って、今では誰でも電卓を使える時代でしょ。そりゃー、掛け算の九九は学んでおかなければいけないけど、2桁同士の掛け算を筆算で出来るようにしておけば、3桁同士の掛け算は電卓に任せればいいんじゃないかしら。第一、スピードも手計算より断トツに速いしね」
という考え方で発言されることは、むしろ普通だろう。
それでは、2桁同士の掛け算と3桁同士の掛け算で何が違うかを考えてみよう。とりあえず、2桁同士の掛け算の「37×54」と3桁同士の「837×654」を筆算で行ってみる。
まず「37×54」の最初は、7×4を行う。その結果の28について、8を1段目の右端に書いて、2を十の位に送る。次に3×4を行った結果の12に、下から送ってきた2を足して14と書いて、1段目は終わる。
次に「837×654」の最初は、7×4を行う。その結果の28について、8を1段目の右端に書いて、2を十の位に送る。次に3×4を行った結果の12に、下から送ってきた2を足して14となり、その4を十の位に書いて、さらに1を百の位に送る。次に8×4を行った結果の32に、下から送ってきた1を足して33と書いて1段目は終わる。
上で見たように、2桁同士の掛け算では、「下から送ってきた数を十の位に足して終り」という作業だけである。しかし、3桁同士の掛け算では、「下から送ってきた数を十の位に足すと同時に、百の位に新たな数を送る」という作業が加わる。この違いに注目すると、2桁同士と3桁同士の掛け算には根本的な違いはないことが分かるだろう。
ドミノ現象に例えると、2つの牌のドミノでは、倒すと倒されるだけの関係であるが、3つの牌のドミノでは、真ん中の牌は倒されると同時に倒す働きもする牌である。したがって、ドミノ現象を子ども達に教えるときは、3つ以上の牌で教えなくてはならない。これと同じことを掛け算の筆算で述べているのである。
2006年7月に国立教育政策研究所は「特定の課題に関する調査(算数・数学)」(小4-中3約3万7千人対象)で、小学4年生を対象とした「21×32」の正答率が82.0%であったものの、「12×231」のそれは51.1%に急落。小学5年生を対象とした「3.8×2.4」の正答率が84.0%であったものの、「2.43×5.6」のそれが55.9%に急落したと発表した。間もなくして筆者は文部科学省委嘱事業の「(算数)教科書の改善・充実に関する研究」専門家会議委員に任命されたことを思い出す(2006年11月~2008年3月)。
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