「愛子天皇論」の裏にある“不敬”の正体 皇位継承議論、衆院選で見えた「中道」の曖昧さ
「女系天皇はダメでも女性天皇は認める」の矛盾
その子が男の子であれ女の子であれ仮に天皇として即位することになると、父親は別の系統(血筋)に属するから天皇としての血筋は父ではなく母に繋がる。言い換えると、母親だけが天皇の血筋を引いていることになる。これが皇室の歴史では一度も存在したことのない女系天皇だ。
しかし、日本の皇室は一つの系統の男系の血筋に皇位を限定し、例外を作らない厳密な仕組みを維持することで時の権力者が皇位の継承に介入するのを防いできた。だからヨーロッパや中国のように系統(王朝)が変わることは一度もなく、皇位の安定を保ってきた。これこそが皇位の正統性であり、皇室が「権力」ではなく「権威」を保ってきた源泉とも言える。
ところで、皇位継承について「女系天皇は認めないが女性天皇は容認する」という考え方がある。これが過去に女性天皇が存在したという事実を踏まえてのことだとすれば大きな誤解だ。確かに現皇室の歴史上、女性天皇が8人(重祚によって10代)いらしたのは事実だ。しかし、これは後継の皇子が幼かったため一時的に独身の姉や母が即位して皇位を守ったケースや、複数の後継者による争いを避けるために崩御した天皇の皇后が一時的に即位したケースなどだ。現代風に言うと、すべての女性天皇はワンポイントリリーフで、その女性皇族の子が即位したケースはない。考えにくいケースだが、仮に一時的な即位だとしても、その方に未婚を強制することなどできないし、天皇となった方に途中で退位してもらうことなどできるはずがない。女性天皇が女系天皇につながる可能性は少なくない。
高市首相が公約に初めて記した「皇族養子案」
今回の解散総選挙で自民党は、公約となる政策パンフレットに「旧氏(旧姓)通称使用の法制化」とともに「皇室典範改正」を掲げた。具体的にはこう記している。「安定的な皇位継承のため、『皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族とする』案を第一優先として、皇室典範の改正を目指す」。自民党が昨年10月に維新と連立を組むにあたって合意した政策でもあり、選挙公約として明記するのは初めてだ。
皇族の養子縁について少し説明しておきたい。敗戦後、直宮家(じきみや)と呼ばれた秩父宮など3宮家を除く賀陽宮家や東久邇宮家など11宮家の皇族方(51人)は、GHQの圧力によって経済的基盤を失い、昭和22(1947)年10月に全員が皇籍を離脱した。日本国憲法下でも5カ月間は皇族だった方々だ。それら旧宮家の末裔には皇統につながる男系の男子がいる。「潜在的な皇位継承者」と言ってよい。その方々を皇族の養子として皇室に迎えることは荒唐無稽でも何でもない。極めて合理的で現実的な方策なのだ。実現すれば、同世代の皇族として若い悠仁さまを支える力強い存在になるはずだ。
これに対し衆議院の立憲と公明が合体した中道の立ち位置は不明だ。選挙公約には書かれていないが、公明は既に有識者会議の報告書に沿った考えを明確にしている。立憲は安保法制容認や原発の条件付き容認で公明に妥協して現実路線に舵を切ったが、この問題をどうするのか。昨年6月に衆議院議長に出した意見には「安定的な皇位継承を確保するための方策を正面から検討し、一定の期限を区切って結論を示すことが求められる」と記した。その言葉を素直に読めば、立法府としての総意のとりまとめに協力すべきである。それができないというのなら、国会はそろそろ民主主義のルールに従って結論を出すべきだ。
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