「愛子天皇論」の裏にある“不敬”の正体 皇位継承議論、衆院選で見えた「中道」の曖昧さ

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立憲(参院)では4割が女系天皇に反対

 国会では衆議院の額賀福志郎議長(当時)の要請を受けた与野党が昨年6月、それぞれの党の意見をまとめて提出した。自民、公明、維新、国民、参政、保守などは、前述した有識者会議の報告書で示された2つの案に沿った内容で意見をまとめたが、共産党を除く主要政党の中で、立憲だけは両論併記の域を出ないものだった。意見としては慎重なものが多く、立憲の関係者によると、その多くは党の「安定的な皇位継承に関する検討本部」の常任顧問である野田佳彦氏(現・中道改革連合共同代表)や同本部長の馬淵澄夫氏の個人的見解だと見られるという。同党ではいわゆる平場でのオープンな議論はなされておらず、党としての正式見解というものもない。昨年12月初めに自民党政調会長の小林鷹之氏が立憲民主党代表代行の馬淵氏に「党見解」を示すよう要請したのはこうした経緯があったからだ。要は、立憲は幹部の個人的意見ではなく党としての正式見解を文書にまとめて出せということだ。しかし、野田代表らは具体的な対応を示さないまま新党「中道」を結成した。

 これに加わらず、元日本保守党の河村たかし氏らと別の新党を立ち上げた元立憲の衆議院議員・原口一博氏は「野田氏は普段から平場でちゃんと説明することをしない。皇位継承という重大な問題で個人の意見を党の見解であるように言うのはダメだ」と批判する。

 立憲の内部事情が分かるデータがある。昨年7月の参院選を前に毎日新聞が立憲の全候補者に対して行った調査だ。これによると「女性・女系天皇に賛成」と答えたのは53%だったが、「女性天皇に反対」も25%、「女性天皇には賛成だが女系天皇には反対」も16%にのぼった。女性天皇に反対する人は女系天皇にも反対であるはずだから、後者の25%と16%を加えた41%が「女系天皇に反対」とみることができる。「立憲=女系派」というイメージがあるが、意外にも賛否は拮抗しているのだ。

野田元首相の「女性宮家」へのこだわり

 野田氏は平成29(2017)年7月29日付けの朝日新聞のインタビューに「これからの10年間でまず女性宮家、次に女性・女系天皇の問題に決着をつけなければならない」と答えている。つまり、最終的には女系天皇を容認するシステムを作るということだ。これは野田氏が女性宮家創設にこだわってきたこととも辻褄が合う。女性宮家は女性皇族が天皇から宮号をいただいて「宮家」の当主となって独立するものだ。当然ながら、配偶者も子も皇族となる。

 これに対し有識者会議が報告書で示した「女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案」は、宮家として独立するわけではない。配偶者と子供は皇族としないことを前提にしており、結果的に一代限りで皇室に残るというものだ。立憲を除く主要政党はこの案を皇族数を確保するための方策として、皇族養子案とともに認めることで一致している。しかし、これについても野田氏は「女性皇族の配偶者や子供にも皇族の身分を与えるべきだ」としており、持論の「女性宮家」と少しも変わらないことになる。

 ちなみに、読売新聞は昨年5月15日付けの朝刊で「女系天皇の検討」などを主張する「提言」を行った。その際、社説で、女性宮家創設について「各党の意見が概ね一致している」と書いた。これは事実ではない。各党が一致したのは「女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案」であり、女性宮家のことではない。しかも、立憲以外は皇族として残った方の配偶者と子供は皇族としないことで一致しているのだ。読者の誤解が続いていないか心配だ。

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