妻に訪れた“試練”に50歳夫は取り乱し…行きずりの女性となぜかホテルへ 「混乱していた」ではすまない繰り返された過ち

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気晴らしに出かけた同窓会で

 そのころ隼澄さんは、大学時代の仲間にさえ会えなかった。美枝子さんの病気のことを話す気にはなれなかったが、会えば話して泣いてしまうこともわかっていたから。だが、地元で中学の同窓会があると聞き、そこに足を運んでみた。どんより重い日常から、少しだけ離れてみたかったのだ。

「当時、好きだった真理と再会できてうれしかったですね。一次会が終わったあと、彼女と抜け出してふたりで1杯飲みに行ったんです。彼女は離婚していて、ひとりで子どもを育て上げた。子どもは独立したものの、今度は老親を抱えて大変らしくて。そういえば昔から、クラスのまとめ役でひとりで苦労を背負うタイプだったよなあと思ったら、なんだか急に彼女への気持ちが高まってきちゃって……」

 決してアグレッシブなタイプではない彼が、なぜか「野生」になってしまったらしい。彼は熱心に真理さんを口説き、そのままホテルへと行った。

「町で声をかけられて“浮気”したことで懲りていたはずなのに、同級生の真理への思いを遂げれば、前のことも帳消しになるみたいな気がしていた。それ以上に、中学のときは僕の片思いだったから、忘れ物を回収するような気持ちもあったのかもしれない。いや、いろいろ言い訳しても、そのとき彼女に対して欲情してしまっただけなのかなあとも思うし」

 瞬発的な情欲が発動されてしまったのか、片思いの記憶が刺激されたのか。いずれにしても彼は彼女と「ひとつになりたい」という欲に負けた。

「帰りに彼女が『なんだかわからないけど、これでしばらくがんばれそうな気がする』と笑顔を見せたんです。僕も同じように思っていた。『またね』と言って別れたけど、たぶんもう会わないだろうと僕は思っていた。ひどいヤツですよね」

予想外の展開が

 だがそれから1ヶ月後、彼は連絡を受けて彼女に再会している。なんのことはない、ありていに言えば不倫関係が継続されたのだ。

「ちょうどそのころ妻の治療が再開されて、僕の不安もピークに達していました。だけどその後は意外な展開が待っていたんです」

 再開された治療が予想以上に効果を見せた。効果があったと知ったとたん、隼澄さんは急に元気になっていく。そしてそれから半年、紆余曲折を経たものの、美枝子さんは劇的によくなった。

「医者も信じられないと言ったくらい。激動の1年だったけど寛解となったんです。美枝子は僕の顔を見て、『だから勝つって言ったじゃない』と勝ち誇ったように笑いました。子どもたちも僕も号泣、僕の母親も美枝子に抱きついて喜んでくれた。美枝子は『お義母さんのおかげでどれだけ助かったか』と初めて泣いた。ああ、美枝子はどんなときも泣かなかったのに、感謝で泣くんだと僕もうれしくなってまた号泣」

 美枝子さんは結局、仕事も長期は休まず、なんとか続けたし、入院したときも病室にパソコンを持ち込んでいた。新薬が劇的に効いたこと、さらに仕事への情熱、子どもたちへの強い愛など生き抜く気力がとんでもなく強かったのだろうと医師は言った。

「これで一段落、ホッとして日常を取り戻しました。よく考えると、いちばん参っていたのは僕だったかもしれない。その後、僕、2週間くらい入院したんです。全身疲労みたいになっちゃって」

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