妻に訪れた“試練”に50歳夫は取り乱し…行きずりの女性となぜかホテルへ 「混乱していた」ではすまない繰り返された過ち

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女性から声をかけられそのまま…「今の時間は何だったんだ」

 数日後、仕事で外出、そのまま直帰しようと繁華街を歩いていると女性から声をかけられた。

「なんだかわからないけど、ふらふらとその女性のあとをついてホテルへ行ってしまったんです。はっと我に返ったのはホテルを出てから。え? 女性に誘われてそういうことをしてしまったのか、今の時間は何だったんだ……って」

 我ながら何がなんだかわからなかったが、知らない女性とそういうことをしてしまったのは確かだった。自分の精神状態が危ないのか、あるいは今のことで救われたのかも定かではなかった。

「僕の中では、なにもなかったことにしようと思ったんでしょうね、たぶん。妻の治療が始まってからも、僕はなんだかふわふわした日常を送っていました。いろいろなことに現実感がないんですよ。ただ、美枝子を失うかもしれないという思いだけがぐるぐるしていて。しっかりしなくちゃとは思うけどしっかりできない」

 美枝子さんは通院と仕事をみごとに両立させていた。つらいときもあるはずなのに、つらいとは一言も言わなかった。美枝子さんは夫を頼らなかったのか、頼れないと思ったのかはわからないが、ひとりでどれだけいろいろな思いを抱え込んだのかは想像に難くない。

「治療が進んだころ、さすがの美枝子も、医師と相談して少しの間、入院することを決めました。体力がなくなっていた。体力を蓄えて再度、治療を開始することとなったんです。宣告されてから3ヶ月がたっていました」

「僕は美枝子がいないと生きていけない」

 70代半ばになる隼澄さんの母は心配して、泊まりがけで家事をしてくれた。子どもたちも「おとうさんが頼りならないから、おばあちゃんが来てくれてよかった」と言ったそうだ。申し訳ないと思いながらも、隼澄さんは自分を立て直すことができなかった。面会に制限はあったが、隼澄さんは毎日、美枝子さんを見舞った。

「美枝子が『なんだかんだ言っても、私は隼澄と結婚してよかったと思ってるよ』『いつもありがとう。隼澄のおかげで私は私でいられる』なんて言うわけですよ。もうそれだけで僕は泣いてしまう。しっかりしろと言われても無理。『僕は美枝子がいないと生きていけない』と訴え続けました」

 医師からは「あとは本人の気力と、治療を続けられる体力があるかどうか」という話もあった。最終的にはホスピスへという話題まで出た。医師は妻の行く末を「死しかない」と思っているように感じられて反発を覚えたが、実際にそれほど美枝子さんの状態はよくなかったらしい。

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