包丁で我が子を“指導”、テストの点数が悪くて放火…現実に起きた「教育虐待」2つの惨劇を振り返る
毎年のように過熱していく首都圏を中心とした中学受験ブーム。今年もいよいよ受験シーズンが到来した。
【漫画】教育虐待で心を病み入院──それでも病室で「勉強」をやめない少女に残る“親の洗脳”の痕跡
早ければ小学校低学年から有名進学塾に通い、合計で数百万円の月謝をかけて学力を高めた子供たちが、周囲の期待を一身に背負い、受験会場へと挑む。そして勝利した者たちの名前や数だけが、塾が発行するチラシや横断幕に記載される。
逆に言えば、その名前や数字の裏には、受験に敗れた無数の子供たちが存在する。その中には、受験を無理強いした大人たちへの恨みや憎しみを抱く者もいる。
実際に、私が原作をして、「コミックバンチKai」に連載中のコミック『教育虐待 ―子供を壊す「教育熱心」な親たち』のコメント欄には、日々そんな子供を真直に見てきた大人や、元当事者たちの書き込みが後を絶たない。マンガを見て初めて、自分が教育虐待の犠牲者だったと自覚し、批判をくり広げる者も少なくない。
昨年も東大前駅で43歳の男性が刃物で無差別に通行人を切り付けるという事件が起きた。逮捕後、男性はその動機について「教育熱心な親に度が過ぎると犯罪が起きると示したかった」と述べている。
教育虐待という言葉が広まる中、その当事者たちの身に実際に起きた痛ましい殺人事件について考えてみたい。
「エリートコース」から落第して
最初に紹介するのは、教育虐待がエスカレートして殺人にまで発展した事件だ。2016年に起きた「名古屋教育虐待殺人事件」である。
事件の加害者は、父親・佐竹憲吾だ。彼は薬局を経営する家庭で生まれ、親からは跡継ぎとして期待されていた。子供時代の彼は父親の望み通り、猛勉強の末に愛知県の名門中高一貫校・T中学へ進学した。
だが、ここから人生が暗転していく。中学、高校で人間関係がうまくいかず、勉強も身に入らなくなり、この学校の卒業生としては珍しく大学へは進学せずに運送業に就いたのである。
両親は、経済的に不自由していた憲吾に多大な経済支援をした。子供時代に期待をかけ過ぎたことへの罪滅ぼしの意味もあったのかもしれない。憲吾は結婚後、劣等感に苛まれながら妻との間に長男を授かる。
長男が小学4年になった時、憲吾はある決意をする。息子に中学受験をさせ、自分と同じT中学へ進学させようとしたのだ。
[1/3ページ]


