包丁で我が子を“指導”、テストの点数が悪くて放火…現実に起きた「教育虐待」2つの惨劇を振り返る
テストの点数が悪くて
T学園に入学後も、父親のマンツーマン指導はつづいた。ようやく受験が終わったにもかかわらず、名門大の医学部に合格するにはここからどれだけ努力するかどうかだと言われたのである。
だが、A男の成績は中学卒業時で学年の平均くらいだった。名門校のT学園とはいえ、これでは超一流と言われる大学の医学部には届かない。父親はいら立ちを募らせ、暴力を加速させていく。
事件が起きたのは、高校進学から2カ月が経った6月のことだった。英語の定期テストが返却され、A男は愕然とした。平均点より20点も低かったのだ。
――この点数を見られたら、父に一体どんな暴力を振るわれることか。
A男は体罰を恐れ、半ば錯乱状態に陥った。6月20日、A男はすべてを消し去って逃げ出したいという衝動から、午前5時頃、自宅に油をまいて放火した後、わずかな所持金を手に逃走した。
木造の家はたちまち炎に包まれた。父親は不在で助かったものの、2階で眠っていた継母と異母きょうだいが焼死した。弟は7歳、妹は5歳だった。
2日後、A男は京都の路上で逮捕。少年院送致が決まった。
二つの事件を分けるもの
父親が子供を殺害する事件、子供が親ときょうだいを殺害する事件を見てきた。
教育虐待が原因の二つの事件を分けるものとは、一体何だったのか。
子供の年齢だ。「名古屋教育虐待殺人事件」のように子供が親に抵抗できないほどの年齢であれば親から殺害される可能性が高まる一方で、「奈良県エリート少年自宅放火事件」のように高校生以上になれば逆に加害者となって親を殺害する可能性が出てくる。
ただし、虐待されているのが女の子の場合は事情が異なる。
女の子の場合は、中高生になっても腕力では親にかなわない。そのため、10代の終わり、時には20代になっても、親の教育虐待下に置かれつづけることもある。
マンガ『教育虐待 ―子供を壊す「教育熱心」な親たち』にも、そこから逃げるために家出をし、歓楽街でトー横キッズとなって体を売ることになった少女の物語が描かれ、大きな反響を呼んだ。
例外としては、2018年に滋賀県で起きた「医学部9浪人殺人事件」がある。医学部進学を厳命して9浪までさせた母親を、娘が殺害してバラバラにして遺棄したのだ。ただ、これは加害者である娘が30代になってから60歳近い母親に対して起こした事件であることを踏まえれば、腕力的には明らかに逆転していたと思われる。
教育虐待を発端にした事件は数多あるが、その結末は親や子供の年齢や、環境によって結末が大きく変わる。『教育虐待~子供を壊す「教育熱心」な親たち』には様々なパターンの虐待の形が描かれているので、これを参考にして、ぜひ歪んだ教育について考えていただきたい。
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