住所は知らない、いつも泊まっていかない彼女…プロポーズしたら「既婚者なの」 40歳男性はなぜ騙されてしまったのか

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金曜の夜の逢瀬…「明日も仕事なの」

 わざとなのか行きがかり上なのか、繁華街の裏手にあるホテル街へと彼女は歩いて行った。これはどういうことなのか、このまま誘っていいのだろうかと慎二さんは足がもつれるようについていった。

「試しにというか雰囲気でというか、ホテルの入り口に彼女を引っ張ったらそのまま入り込むような形になった。あとから思えば、あれは暗黙の了解だったんでしょう。彼女が下地を作って僕が実行した。そんなあうんの呼吸というか」

 当時の慎二さんは、男女の関係にはまったく慣れていなかったから、紀代乃さんはわざわざそんな状況を作り出したのかもしれない。

「めくるめく」という言葉がぴったりの夜だった。彼は完全に彼女の虜になった。

「金曜の夜だったから、朝まで一緒にいたいと言ったら、『私は明日も仕事なのよ』と。泣く泣く別れましたが、土曜の夜遅く、『これから行ってもいい?』と連絡があった。僕の部屋は狭いしきれいじゃないけどと言うと、『いいの。あなたの部屋へ行きたい』って。あわてて片づけて迎えました」

 お互いをむさぼるように求め続け、いつしか熟睡していた。気がつくと朝日がカーテンの隙間から入ってきて、隣に彼女はいなかった。テーブルの上に「ありがとう。またね」と書いてあった。いてくれればよかったのにと思いながらも、あまりの疲労感でまた眠りについた。

「結婚してほしい」と言うと…

 それからふたりは平日、週末問わずに予定を合わせては会った。心も体も、彼女なしには生きていけないとまで彼は思いつめた。

「3ヶ月ほどたったころ、『結婚してほしい』と言ったんです。彼女は『私もあなたが大好きだけど、私は年上すぎる』って。そこで初めて彼女が7歳年上だと知ったんです。7歳くらいどうってことはないと僕は思ったし、彼女にもそう言いました。『私、いろいろ抱えているし、あなたにはあなたにふさわしい人がいるはず』とも言った。そうやって僕から逃げようとしているのかと追いつめると、『結婚できない事情があるのよ』と彼女は泣きだしたんです。彼女を泣かせるつもりはなかったから、その日はそのまま抱き合って眠りました」

 翌朝起きると、いつものように彼女はいなかった。泊まってはいかないのだ。彼女がひとり帰っていく姿を思い浮かべるたび、彼は胸が締めつけられるようだった。親と一緒だと言っていたから親が何か問題を抱えているのだろうか、あるいは家庭に複雑な事情があるのだろうか。それなら僕が助けてあげたい。彼は心からそう思った。

「だけど年上の彼女をあまり追いつめてもいけない。追いつめると彼女はいなくなる。そんな気がして怖かった」

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