住所は知らない、いつも泊まっていかない彼女…プロポーズしたら「既婚者なの」 40歳男性はなぜ騙されてしまったのか

  • ブックマーク

【前後編の前編/後編を読む】転勤について来てくれなかった恋人 その後、音信不通になり…自宅に押しかけて知った「秘密」

 このところ既婚と知らずに男性とつきあった女性が、その後、既婚であることを知り「貞操権の侵害」で相手を訴え、慰謝料を認められるケースがいくつかあった。貞操権というと古くさい感じがするが、言い換えると「性的関係を持つ相手を自分の意思で決める権利」のことだ。相手が既婚であると知っていれば性的関係はもたなかったとするなら、その人はその権利を奪われたことになる。

 貞操権侵害は男性にも認められる。既婚なのに独身だと偽った女性と結婚するつもりでつきあっていたら、ある日突然、実は既婚者だったと知ったような場合があてはまる。

「僕、そういう経験をしました。慰謝料の請求などはしなかったけど、ものすごい敗北感に苛まれました。あれが僕の女性関係の原点だった。そこからずっと女性には騙され続けている気がします」

 しかめ面のあと、フッと自嘲気味に息を吐いた青野慎二さん(40歳・仮名=以下同)だ。23歳の新入社員のころ、街で知り合った7歳年上の紀代乃さんと恋に落ちた。彼は彼女に夢中になった。

「本当に素敵な女性だったんですよ。最初、結婚しているだろうと思っていたけど、彼女は『してないわよ。昔、ほんの2年くらいしていたけど夫に見捨てられたの』と明るく言った。子どももいないという彼女の言葉を信じていたんです」

就職で上京してきた慎二さん

 連絡は携帯電話だったし、彼女の自宅の住所も知らなかったが最寄り駅はわかっていた。職場がどこにあるかも知っていた。親と一緒に住んでいるから家に呼べなくてごめんなさいと言われたものの、彼がひとり暮らしだったので問題はなかった。

「僕は地方の大学を出て、就職のために上京してきたんです。就職で初めて東京暮らしはつらかったですね。東京の大学に進めばよかったと思ったけど、家庭の事情でそれはむずかしかった。地元の国公立大学に行ってほしいと親に言われたし、僕自身も東京に行く気はあまりなかったので」

 だが大学生活で考えは変わった。「こんな田舎で一生終わりたくない」と思ったそうだ。

 若かったからそう思ったんでしょうねと彼は独り言のように言った。自然に囲まれて育ったから都会に憧れた。だが実際に都会の生活をしてみると、「ときどき頭がガンガンした」という。

「人は多いし物価は高いし、みんなあくせく早足で歩いていて。渋谷のスクランブル交差点を最初は渡れませんでした。信号2回くらい渡れなかったことがありますよ。最初は信号が変わったら一斉に人が動き出したのに驚いて渡れず。次こそは思ったけど、自分の行く方向の前と左右からどっと人が流れてきて、すぐに元の場所に戻っちゃった。3回目でやっと渡れたんですが、どうやって人の間を縫って行ったらいいかわからない。みんなよくぶつからずに歩いているなと本気で感激しました」

次ページ:ぶつかった お相手は

前へ 1 2 3 4 次へ

[1/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。