「農協」「医師会」「建設業協会」への「利益誘導」の実態が明らかに 国庫支出金データから分析する「組織票」を集め続ける団体の特徴とは

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「国庫支出金」で利益誘導が明らかに

 相関関係が明白なのは「農協」でした。農協の組織内候補の得票率が高いほど、その候補者の出馬する選挙区の市区町村への国庫支出金も増える、すなわち“正の相関”がある。また、統計的な有意差は確かではありませんが、「農協」以外にも「医師会」や「建設業協会」などでも相関関係がみられます。相関関係の強さを表す係数(相関係数)で表すと、「農協」は0.0084、「医師会」は0.0019、「建設業協会」は0.0013と正の相関になりました(ギャラリー参照)。「医師会」と「建設業協会」は黒に近いグレーといったところでしょうか。

「農協」は土地改良事業や農地整備事業などのあらゆる農業政策に関わっており、これに伴って政府から分配される国庫支出金で利益誘導されている可能性が考えられます。また、農協は地域のコミュニティとしての側面が強い。そのため、何か1つ利益誘導をすると、コミュニティ内の波及効果で10にも20にもなって得票数に返ってくるということがあり、政治家の期待感から利益誘導につながっているのではないでしょうか。
 
 ここまでは「与党」の組織内候補の得票率と国庫支出金の関係でした。それでは、「野党」の組織内候補の得票率と国庫支出金の関係はどうでしょうか。

 データを分析すると興味深いことに、野党では組織内候補の得票率が上がっても国庫支出金の額が増えることはない、つまり与党とは逆に“負の相関”があることが分かったのです。例えば、産業別の労働組合で「電力総連」や「自動車総連」の組織内候補の得票率が高い地域にはあまり国庫支出金が分配されていない。相関係数でいうと「電力総連」は-0.0058、「自動車総連」は-0.0063という負の相関を示しました。
 
 例えば、豊田市などの企業城下町にはこの傾向が強い。企業があると自治体が潤うから国庫支出金の額が少なくなるとも考えられますが、その自治体の財政指数などもモデルに入れて分析を行っているので、やはり意図的に国庫支出金の分配額が少なくなっていると考えられます。

「組織票」を集め続けるには

「組織票」の衰退が叫ばれていますが、こうした過去のデータを見ているとやはり団体によっては根強い支援を続けていると感じます。例えば、与党でいえば「農協」、野党でいえば「電力労連」や「自動車労連」です。これらの団体の特徴は、構成員が地理的に集積していることです。

「農協」であれば都市部よりも地方部の農業地域、「電力労連」「自動車労連」であれば、企業の工場などが支援者の集積している地域です。地理的に支援者が集積しているとコミュニティが形成されやすく、集票力の維持につながるのでしょう。しかし、日教組や自治労などの公務員系の支援団体は全国に広く分散しているため、集票に苦しんでいるのではないかと思います。もちろんこの限りではなく、郵便局長会などは全国に分散していても鉄壁の集票力を誇りますがね。

 今回の研究では、日教組の支援する候補者の得票率と国庫支出金の関係も調査しました。結果を見ると、日教組は野党候補を支援しているにもかかわらず正の相関(相関係数:0.0018)がみられます。これは統計的に有意な結果ではないですが、得票率と国庫支出金が結びつかずデータのばらつきが大きいことをうかがわせます。日教組は地理的な集積がなく集票能力が薄まっていることも関係して、得票率と国庫支出金の関係が比較的弱いのではないでしょうか。

 今後、人口減に伴う団体構成員の減少や無党派層の増加によって、「組織票」の影響力が下がっていくことは避けられません。その中でも影響力を維持する組織というのは、まさに地理的な集積がある団体なのではないでしょうか。

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