劇場版鬼滅が決めた「原作そのままが正解」とオリジナルアニメの苦戦…伊藤智彦監督が語る「2025年アニメの転換点」

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2025年「めちゃくちゃよかった」作品、“不健康さ”を感じた作品

――生成AIとアニメの議論は今後も続きそうですね。伊藤さんの中で2025年一番良かったアニメ映画は何でしたか。

伊藤:「ひゃくえむ」はめちゃくちゃよかったです。「ルックバック」にも通ずるような、手書きでやってやるぜという怨念みたいなのが作品に出ていました。物語中盤ぐらいに3分くらいの長回しがあるんです。選手が入場してくるところからカメラがずっとフォローして、選手が紹介される姿から走っていくまでをカメラで追うという暴挙をしていて。背景も手描きなんです。嘘でしょ、って笑っちゃいました。

「ひゃくえむ」はロトスコープという実写素材を撮ってから、それをトレース、もしくは土台にしてアニメにする手法を使っています。もしかしたらAIで一番置き換えられやすい手法かもしれないんですが、現時点ではまだできないし、「ひゃくえむ」には描き手による揺らぎが多分にあった。それが良かったんだと思います。

――2025年のテレビアニメのヒットでいうと『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』がありました。伊藤さんはあの作品をどう見ましたか。

伊藤:面白かったのですが、その一方で「これで喜ばれていること」に対して少し不健康さのようなものを感じました。結局あの作品からは新しいものは生まれなかったのでは?とも思っていて。あの作品を見たから、いわゆるファーストの「機動戦士ガンダム」を見る人が増えたことはいい影響だと思うんです。ただ、あの作品で生まれたマチュなどの新しいキャラたちが昔の作品を見るための「踏み台にされた」ようにも感じていて。

 SNSでも隠しネタに反応していた視聴者がたくさんいたとは思うんですけど、新しいキャラたちのドラマをもっと見たかったなと思いました。ニャアンは難民設定でしたし、その彼女が戦争の道具にされていたり現代的なテーマを持つ可能性があった。その部分をもっと見たかったですけど、そういう辛い内容は見たくない、という人が多いのが今の世相なのかもしれませんね。

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【記事後編】では、漫画とアニメの「キャラクター」の違いを中心に、伊藤監督の最新作「クスノキの番人」についてもお話をうかがった。

徳重龍徳(とくしげ・たつのり)
ライター。グラビア評論家。ウェブメディアウォッチャー。大学卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。記者として年間100日以上グラビアアイドルを取材。2016年にウェブメディアに移籍し、著名人のインタビューを担当した。その後、テレビ局のオウンドメディア編集長を経て、現在はフリーライターとして雑誌、ウェブで記事を執筆している。著書に日本初のグラビアガイドブック「一度は見たい! アイドル&グラビア名作写真集ガイド」(玄光社)。noteでマガジンを連載中 X:@tatsunoritoku

デイリー新潮編集部

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