劇場版鬼滅が決めた「原作そのままが正解」とオリジナルアニメの苦戦…伊藤智彦監督が語る「2025年アニメの転換点」

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 映画「劇場版ソードアート・オンライン〜オーディナル・スケール~」「HELLO WORLD」などで知られ、1月30日には東野圭吾のベストセラー小説をアニメ化した「クスノキの番人」が公開される伊藤智彦監督とともに、2025年のアニメ業界を振り返るインタビュー企画。前編は「鬼滅の刃」のヒットからオリジナルアニメの減少、さらにAIとアニメについて聞きます。

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――まず2025年のアニメ業界を振り返っていかがでしょうか。

伊藤:総体としては、原作のないオリジナルアニメが難しい時期に来つつあるなと感じています。

――伊藤さんは数年前からオリジナルアニメの苦戦を指摘していましたが、より顕著になっていますね。映画では「劇場版『鬼滅の刃』無限城編」「チェンソーマン レゼ篇」が空前のヒットとなる一方で、「ChaO」「果てしなきスカーレット」といった劇場版オリジナルアニメは苦戦を強いられました。どういった要因があるのでしょうか。

伊藤:これまでは、例えばかつて東映の劇場版「ドラゴンボール」シリーズなどは漫画原作そのままではなく、アニメスタッフがオリジナルで作ったバージョンの映画でした。そうした中、近年は映画ONE PIECEの「STRONG WORLD」辺りから原作者がコミットするものが増えていき、『鬼滅~」の「無限列車編」からは原作漫画そのままを超ハイクオリティにアニメ化すれば、みんなが一番喜ぶと気づいたのだと思います。見る側にとっては安心はありますよね。漫画で味わった感情を、さらに増幅させるものを見られるわけですから。

 とはいえ、例えば自分の関わった人だと、野﨑まどさんみたいにオリジナルを書ける脚本家がどれだけいるのかという問題もあります。ただアニメ業界にオリジナルをやろうという環境もそんなにないよなあ、と。ただ何かしらは作り続けていかなければ人材は育たない。脚本家って練習のためだけの練習をしてもあまり意味がなくて、現場に投入をし続けないと育成できないんですよ。

――「劇場版『鬼滅の刃』無限城編」「チェンソーマン レゼ篇」は世界的にもヒットしています。日本のアニメが特にアメリカでヒットするようになったのはここ数年でのアニメ業界での大きな変化だと思います。そのあたりはどう考えていらっしゃいますか。

伊藤:先日も東宝がイギリスのアニメ配給会社を買収したというニュースがありましたが、2020年にアニプレックスがクランチロールを買収してから、世界で爆発的に日本のアニメが伸びている印象です。数年前の脚本家協会のストライキやコロナの影響もあり、ハリウッド映画の力が低下してるようにも感じるので、そことうまく入れ替わるようになったんじゃないでしょうか。

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