劇場版鬼滅が決めた「原作そのままが正解」とオリジナルアニメの苦戦…伊藤智彦監督が語る「2025年アニメの転換点」

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劇場版「鬼滅の刃」の監督が紹介されない日本

――いまや日本が誇る数少ない輸出製品と言われるアニメですが、近年はより世界を意識して制作をしていたりしますか。

伊藤:逆に「世界を」と意識しすぎると失敗するケースが多々あります。日本人が世界的に「これが受ける」と考えるものは、向こうの人たちには多分好かれないんじゃないですかね。アメリカではポリコレが厳しいので「日本だけはまだ露出の多い少女が戦うような、北米だと怪訝に思われるタイプの作品をやってるのか!」とか思われているかもしれないですが。

 世界と「鬼滅の刃」でいえば、内部スタッフにもう少し光を当ててほしいとは思います。外崎春雄監督は国内ではほとんど紹介される機会がありませんが、かたや国外。最近だと中国公開に合わせて撮影監督の寺尾優一さんと舞台挨拶したと中国の知人から聞きました。

 今後アニメを目指す人のためにも、誰が何をやっていたのかは歴史としても残しておいてほしいんです。そもそも外崎監督は日本映画の歴代興行収入の1位、2位である「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」「劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第一章 猗窩座再来」の監督です。もうちょっとみんな知りたいのではないでしょうか。せっかく国外でもヒットしている作品ですし、声優さん以外にももっとフィーチャーしてあげてほしいです。

AI、そして著作権について

――2025年は生成AIの台頭も著しかったです。ライターとしてはAIの登場にはかなりの恐怖を感じているんですが、その点は伊藤さんはいかがですか。

伊藤:これまで人がやっていた作業がAIに差し変わることはアニメでもこれから起こるでしょうし、AIを使った作品は次々出てくると思います。技術の進化は絶対止められないので。その中で、どこかで折り合いをつけていくしかないと思います。Midjourneyが話題になったときアニメでも使えるかもと思い、イメージボードをAIで作れるかなと試してみたんですが、実際やってみるとなかなかうまく望むものは出来上がりませんでしたね。

――逆に個人でAIを使い、アニメを作れるようになる可能性はありますよね。

伊藤:間違いなくそうなるでしょうね。AIではないですが、先日、小学生と中学生が3DCGソフト「Blender」でアニメを作っていてすげえ!と思いました。技術革新によって裾野は広がるでしょうし、参入する人も増えていくと思います。ただ、そのことで良い作品が増えるかどうかはまだ現段階ではわからないですね。AIには作れないものを意識して作ることが、ここ数年は必要なのかなと思います。

――AIではChatGPTによる画像生成でスタジオジブリ風の自画像を作ることがSNSでブームとなり、OpenAIのサム・アルトマンCEOがプロフィール画像にも使いました。一方で日本では「著作権侵害ではないか」と議論となりました。AIに関して、日本のSNSでは著作権違反だと批判の声が多い一方で、先日ディズニーがOpenAIとの提携を発表し、マーベルやスターウォーズなどのキャラクターを自由に生成できるようになりました。

伊藤:止めても結局やる人間はやるから、だったら認可させてビジネスにした方がいいというのはアメリカ的なマインドですよね。

――今や日本のアニメ進出に貢献しているクランチロールも、創業当初は日本のアニメに勝手に字幕をつけて配信する海賊版サービスでした。

伊藤:YouTubeも著作権法違反が横行していましたが、ユーザー数が増えて、じゃあ公式に使った方がいいやとなった。音楽配信もそうでしたが、ユーザーフレンドリーな方にシフトをしていくのでしょうし、日本のIPホルダーも結果、生成AIと契約を結ばざるを得なくなるとは思います。あとはどう折り合いをつけて、着地させるかではないでしょうか。

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