「藤井聡太六冠」に囁かれる“死角”とは? 伊藤匠二冠との「二強時代」は来るか?【2026年の将棋界展望】
周囲のレベルもアップ
叡王戦が創設される以前、七大タイトル制だった時代に、全冠独占を達成したのは羽生のほかにいない。羽生は1996年に七冠となり、同年のうちに六冠へと戻った。以後も羽生は長く第一人者であり続け、複数のタイトルを保持する時代が続いた。ただし、七冠再独占はならなかった。
羽生の大きな功績の一つは、周囲のレベルをも引き上げたことにある。羽生より歳上の谷川浩司17世名人(63歳)、同年代の佐藤康光九段(56歳)、森内俊之九段(55歳)、郷田真隆九段(54歳)、丸山忠久九段(55歳)、藤井猛九段(55歳)らはもともと強かったが、羽生と激闘を繰り広げるうちに、さらにパワーアップしていった。
それと同じ現象は、藤井が第一人者の現在にもおこっているようだ。藤井が強くなり続ける一方で、伊藤や永瀬らもまた強くなっている。
現時点で伊藤がタイトル挑戦を目指せる棋戦は夏の王位戦や、秋の竜王戦となる。これらは比較的持ち時間の長い2日制。もし伊藤がここで藤井を破って藤井五冠-伊藤三冠の関係となれば、これはいよいよ両者による「二強」の時代に入ったといってよさそうだ。
藤井に対して、竜王戦で2期連続挑戦した佐々木勇気八段(31歳)や、これから棋王戦で2期連続で挑戦する増田康宏八段(28歳)などももちろん、有力なタイトルホルダー候補だ。
さらには服部慎一郎七段(26歳)、藤本渚七段(20歳)など、常に高勝率の若手実力者たちも、着実にステップアップを重ねている。藤井や伊藤よりも若い棋士が挑戦の名乗りをあげ、世代交代はさらに進んでいく可能性もある。
羽生九段、タイトル100期の可能性は
将棋の棋士のほとんどは、二十代から三十代のうちにキャリアハイを迎える。四十代以後にタイトルを獲得できる棋士は、そう多くはいない。
しかし将棋界の長い歴史を振り返ってみれば、年齢を重ねてなお、超人的な活躍を続けた棋士もいる。その代表例は大山で、六十代になる直前までタイトルを持ち続け、六十代になってもなおタイトル挑戦やA級在籍を続けた。そうした大山の最年長記録を破る可能性があるとすれば、その一番手は現在55歳の羽生にほかならない。
羽生が若きタイトル保持者を破り、タイトル獲得通算100期を達成すれば、現代世界における偉業といえそうだ。
藤井が台頭する以前の第一人者であった渡辺明九段は現在41歳。膝の負傷というアクシデントに見舞われ、休場を余儀なくされている。もしこの先、渡辺が復活し、再び藤井らと伍して戦うことになれば、多くの人に勇気を与えることだろう。
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