「藤井聡太六冠」に囁かれる“死角”とは? 伊藤匠二冠との「二強時代」は来るか?【2026年の将棋界展望】

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永瀬九段の強さ

 将棋界の歳時記ではまず、1月に王将戦七番勝負が開幕する。この棋戦において、2年連続で挑戦の名乗りをあげたのは永瀬だ。

 現在の永瀬がどれだけ強いかを一言でいえば「藤井以外にはほとんど負けない」ということになる。

 王将戦の挑戦者は7人総当りのリーグ戦で決められる。永瀬は伊藤ら並み居る強豪の全員に勝ち、6戦全勝でリーグを制した。また順位戦A級(10人総当り、全9回戦)でも永瀬は6戦全勝で首位を走り、2年連続での名人挑戦にも近づきつつある。

 永瀬はこれまで王座4期、叡王1期という実績を誇る。23年、藤井に王座を明け渡し、八冠独占を許して以降は、無冠の状態が続く。しかし永瀬の勝ちっぷりを見れば、実質的に藤井に次ぐナンバー2は永瀬だと見る人もいるだろう。

 直近(25年夏)の王位戦七番勝負では、永瀬は敗退したものの、藤井を相手に2勝をあげた。両者の対局はいつも熱戦だ。これまでと逆の目が出たとしても、なんら不思議ではない。

 もし永瀬が藤井からタイトルを獲得すれば、将棋界は「三強」か、あるいは群雄割拠と表現するのが適切な時代へと入るのかもしれない。

藤井の八冠復帰はあるか?

 伊藤叡王への挑戦権を争う16人出場のトーナメントは昨年12月下旬に組み合わせが発表された。

 1月7日、藤井は1回戦で山崎隆之九段(44歳)と対戦する。現代はコンピュータ将棋(AI)を活用しての序中盤の研究がさかんだが、山崎はそうした方向性とは真逆の道を歩み続ける独創性に優れた棋士だ。

 藤井が対戦し続ける相手はみな強い。そうした中で4回勝ち抜けば、例年4月に開幕する叡王戦五番勝負で伊藤に挑戦できる。

 藤井の生涯勝率は現時点で8割3分前後。現代将棋史上最高の実績を誇る羽生であっても、生涯勝率は7割台のときが長かったことを考えると、藤井の勝率もまた規格外だ。

藤井の死角は?

 そんな藤井に目立った弱点などあろうはずもない。ただし、あえて死角を探すとすれば、時間設定が比較的短めの「チェスクロック方式」には苦手意識があるようだ。

 将棋の公式戦における消費時間の計測方式は、大きく分けて60秒未満を切り捨てる「ストップウォッチ方式」と、すべての消費時間を加算していく「チェスクロック方式」が存在する。後者の方が時間の減り方は早い。

 2024年の叡王戦五番勝負第5局、藤井が伊藤に敗れて叡王を失冠した際、藤井は次のように語っていた。

「叡王戦だとやっぱり特に、終盤の精度が低かったことが結果にもつながってしまったかなと思っています。特にチェスクロックのときの時間の使い方であったり。そういったところは以前から課題ではあったので、それが出てしまったというところもあったかなと思ってます」

 藤井2度目の失冠となった2025年の王座戦五番勝負もまた、チェスクロック方式だった。

 叡王戦、王座戦では、挑戦者を決めるトーナメントも同様にチェスクロック方式が採用されている。

 藤井は伊藤へのリターンマッチを目指した前期叡王戦のトーナメントにおいて、準決勝で早指しの雄・糸谷哲郎八段に敗れた。番勝負ではほとんど敗退のない藤井であっても、一発勝負の連続であるトーナメント戦では、挑戦権を得られぬまま敗退する可能性も当然ある。

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