キムタクに「お前は偉い!」さんまが思わず漏らした 二人が才能を認め合った「あんぱん事件」の全貌

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 明石家さんまの「ヤングタウン」(MBS)は、1976年の放送開始以来、曜日を変えながらも続いている超・長寿番組。さんまのプライベートが明かされることも多いことから、しばしばネットニュースのネタにもされる。

 11月15日の放送回では、木村拓哉への誕生日プレゼントを巡るエピソードが披露され、このトークがまたいつものように、いくつものスポーツ紙のサイトで取り上げられることとなった。

 明石家さんまと木村拓哉が公私ともに深い関係にあることはよく知られている。テレビを主戦場としてきた二人なので、接点があること自体は何ら不思議ではない。しかし、なぜ17歳もの年の差を超えて友情をはぐくむこととなったのか。
「踊る!さんま御殿!!」などのヒット番組でプロデューサーをつとめた吉川圭三氏は、2人が互いを認め合った瞬間の目撃者である。その時の情景は今もなお彼の脳裏に刻まれているようだ。

 二つの大きな才能はどのようにして交差したのか。以下、吉川氏の新著『人間・明石家さんま』からそのエピソードを抜粋してご紹介しよう(同書をもとに再構成・文中敬称略)。

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あんぱん事件

 さんまの仕事への姿勢に気づき、学ぼうとする後輩もいる。その代表格は木村拓哉だ。私にとって最も印象的で、その後の芸能界にも大きな影響を与えたのが、さんまと木村の距離を縮めた「あんぱん事件」ではないだろうか。

 それは「さんま・所のオシャベリの殿堂」という、1992年から全26回にわたって放送された特番でのことだった。さんまと所は、これをキッカケにプライベートでも距離を縮めていた。

 この番組では、さんまと所ジョージが次から次へとさまざまなゲストを相手にトークを展開する。ひとりのゲストの出演が終わると、次のタレントのためにセットをセッティングし直すため、さんま・所の両名は上手の舞台袖で待機することになっていた。そこにスタッフが和菓子やクッキー、菓子パンなどを用意していたため、さながら簡易的な楽屋と言ってもいい雰囲気になっていた。

「あんぱん事件」は、私が見ている前で唐突に始まった。1994年1月6日の放送回の年末収録時である。所ジョージが舞台袖に常備してある大きめのあんぱんを食べようと、手で半分に割って、まずは片方を食べ始めた。そして食べ終えると、今度は残りの半分を食べようとした。

 それを見逃さなかったのがさんまである。さんまは唐突に切り出した。

 さんま「所はん、ちょっと待ちーな」

 所「ん? なに?」

 さんま「あんた今、あんぱん半分に割ったやろ」

 所「割ったよ」

 さんま「そりゃないわ~」

 所「なにが?」

 さんま「半分に割ったら、『はい!』ってオレに半分くれると思うやないかい!」

 所「なんでよ」

 さんま「なんでやないねん! オレと所はんもう仲の良い友達になれたんやから、普通そう思うやないか」

 所「さんちゃん、なに言ってんのよ。あんぱん、まだそこにたくさんあるじゃん、食べたかったら勝手に食べなよ」

 さんま「食べたいとかそういうことやないねん。じゃあなんで半分に割んねんな!」

 所「さんちゃん、わかってないな~、このあんぱんは大きいでしょ? 半分にしたほうが食べやすいでしょ?」

 さんま「せやけど、パカッと半分に割った時点で『あぁ、友達のオレに気を遣(つ)こうてくれとるなぁ』と思うがなぁ~。オレもアンタがあのあんぱんを半分に割る瞬間、思わず涙が出そうになったんやで。あかんわ~、アンタそういうとこあるわ~」

 そこでスタッフから「はい、本番です!」の声がかかる。さんま・所の「あんぱんトーク」は、ステージに上がってもそのまま60分は続いた。

見つめ続けていた木村拓哉

 さんまは、こんな些細なキッカケを大きな笑いに拡大していく。これは欧米等では「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」という言葉で表現される事もある。セールスマンなどが、訪問先でドアを閉められる前に自分の足を突っ込み、中に入り込んでセールストークに持ち込み商品を売りつけ易くする技である。さんまのその能力は並外れている。そこはディレクターや放送作家の小技や企画力などまったく及ばない領域の能力といえる。

 この面白さこそ、明石家さんまというタレントの魅力そのものである。私はゲストたちのトークを少しずつ削って、この「あんぱん問答」を30分ほどの尺で放送した。

 さて、固唾を呑んでこのトークを見守っていた一人のタレントがいる。彗星のごとく出現した人気急上昇中のSMAP(当時)の木村拓哉である。出番を控えた木村は「あんぱん問答」の一部始終を出番を待つスタジオ袖でじっと見ていた。

 彼はステージ登場後、さんま・所の両名に「あんぱん話、永遠に続くと思いました。でも、すごかったです」とその「トーク芸」への賞賛を隠さなかった。

 さらに、なにか思うところがあったのだろうか、木村は自分の出番が終わった後もスタジオの片隅のパイプ椅子に座ってずっと収録終了までさんまと所のやりとりを眺めていた。

 もう夜半なので、本来なら収録が終わったらさっさと帰宅しているところだろう。しかし木村はスタジオでさんまをじっと見つめていたのだ。

 そしてエンディングコーナー。木村は、さんま・所の居るセットに突然舞台袖から登場すると、いつのまにか自分でどこかで買い求めてきたと思われるあんぱんを手にしていて、ふたりにそっと差し出したのだ。

 驚くさんまと所。そしてさんまがこう言った。

「木村、お前は偉い!」

 今ではさんまと木村拓哉の友情は広く知られているが、まさにその距離が瞬く間に縮まったのがこの収録だったのである。木村が明石家さんまのトークに惚れ込み、さんまも木村のセンスとやる気を認めた。この日の木村は、収録が終わっても控え室にいるさんまのもとを去ろうとしなかった。

吉川圭三(ヨシカワ・ケイゾウ)
1957(昭和32)年東京下町生まれ。早稲田大学理工学部卒。1982年日本テレビ入社、「世界まる見え!テレビ特捜部」「笑ってコラえて!」等のヒット番組を手掛ける。ドワンゴ、KADOKAWAを経て2025年12月現在は映像プロデューサー。『たけし、さんま、所の「すごい」仕事現場』等著書多数。

デイリー新潮編集部

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