明石家さんまが「スマホ検索」をしない決定的な理由 30年前の会話も再現できる驚異の能力とは

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 記憶力が落ちてきたのは年齢のせいか、スマホのせいか、その両方か。そんな悩みを抱えている人は多い。

 元日本テレビプロデューサーで映像プロデューサーの吉川圭三氏は、「踊る!さんま御殿!!」「恋のから騒ぎ」など数多くのヒット番組を手掛けてきた。公私にわたり明石家さんまとの親交は深く、新著『人間・明石家さんま』では、「お笑い怪獣」の知られざる「人間としての素顔」を明かしている。
 
 同書によれば、さんまの記憶力は並外れているという。70歳になった今なお安易にスマホ検索に頼ることもなく、驚異的なトーク力を維持しているのだとか。

 規格外の「能力」についてのエピソードを見てみよう。以下、吉川氏が本人了承のもと明かした秘話である。(『人間・明石家さんま』より抜粋・再構成しました。文中敬称略)。

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30年前の発言を再現!

 さんまと話していると、その記憶力のすごさに舌を巻くことがある。あれだけの大スターなのに、空港で1年に一度会う程度の一般人の顔を完璧に覚えているし、ほとんどの場合、1年前、2年前にどんな会話を交わしたかも覚えている。たとえ、私がさんまと出会ったばかりの30年くらい前のことであっても、さんまは今見てきたかのように詳しく説明できるのだ。

 2年前にこんなことがあった。
 
 さんまと共演歴が多い日本テレビの女性アナウンサーBがさんまに結婚報告をしたいということで、私が間に立って伝えたところ、さんまは「そりゃめでたい。お祝いやろう」と喜び、小宴を催すこととなった。参加者はさんま、B、私を含めた5人。
 
 さんまは開始時間ぴったりに現れると、いつものようにマシンガントークを3時間以上繰り広げた。スタジオ・楽屋と同様、「おカネが取れる」レベルのトークである。

 Bは、拙著『たけし、さんま、所の「すごい」仕事現場』を読んできていて、私とさんまにこんな質問をした。
 
「吉川さんがさんまさんにプール(注・市販のビニールプール)をプレゼントして、距離が縮まったというのは本当ですか?」

 私が即座に答える。

「そうそう、ラジオの収録で、さんまさんが『テレビ局が楽屋に果物やらお菓子やらよう持ってきよるけど、それじゃ何にもならんねん。もうこうなったら、テレ朝には全自動マージャン卓、フジには高級冷蔵庫、TBSには小型サウナ、そや、日テレにはプールを持ってきてもらおかいな』っておっしゃってね……」

 するとさんまがこう言ったのだ。

「吉川くん、そこやけど間違っとるで。フジテレビとTBSが逆。『フジには小型サウナ、TBSには高級冷蔵庫』やがな」

「えっ」と驚く私。そんな昔、ラジオで話しただけのフレーズを、そこまで詳しく覚えているなんて……。

 あ然とする私にさんまはこう言った。

「あ、オレ、小さい頃から周りによく『高文(たかふみ)くんは普段の会話や出来事を全部覚えとるんやないか』って言われとった。確かにそういうところがある。今でもそうやねん。昔のことでもつい昨日のことみたいにいつでも思い出せる」

 大容量のハードディスクから過去の最適なエピソードを瞬時に引っ張り出して展開したり、とっさにツッコミのフレーズを引っ張り出してきたりする卓越したトーク能力の源泉はこの脳みその使い方だったのか──私はただ、驚愕するほかなかった。

番組の成り立ちを正確に記憶

 このさんまの驚異的な能力を持ってすれば「天下一のペテン師・詐欺師」や「怪しい新興宗教の教祖・開祖」にでもなれたと思うが、それを善なる方向に進ませることが出来たのはさんま本人にとっても世間の人々にとってもとても幸運なことであったと思う。

 私も、このさんまの凄い記憶力のおかげで少々ホッとした事があった。

 テレビ番組というのは、プロデューサーやディレクター、出演者や放送作家、そして様々なスタッフの努力の結果作られる。ただこれが面白いもので、昔も今もそうだが、番組がヒットすると「アレはオレが(私が)全部やった・考えた」と言う人間が3~4人くらい出てくる。いわゆる「アレオレ(ワタシ)主張」という奴だ。厳密と言われる映画ですらそのクレジットには政治的事情や力関係が反映される事があるので、放送したら残らないテレビ番組の正確な履歴や来歴などは消えてなくなる運命にある。

 数年前、Netflixのキャンペーンで珍しくYouTubeに出演した明石家さんまがインタビュアーの吉田豪氏に「踊る!さんま御殿!!」の来歴に関して尋ねられ、こう答えていた。

「『(恋の)から騒ぎ』なんですよ。実は。『踊る御殿』て。(男性タレントを出演させた)『から騒ぎ』のスペシャルから始まった。その両方の番組のセットを考えたのが吉川君。『恋から』は素人だからセットは豪華に、声が通らないから半円形にしてくれた。『踊る御殿』は全部タレントか有名人やけどセットは360度にした効果。あれはすごいと思う」

 メインMC本人が番組の起源と成り立ちを覚えていたという事実とそれを公にしてくれたということだけで私は十分である。

「スマホ検索」は絶対にしない

 70歳を迎えたさんまが天性の記憶力と頭の回転を維持できているのは、普段の鍛錬の成果だと私は感じている。
 
「なんやったっけ? あの昔のヒット曲。ほら、あのナントカっていう女優さんが歌ってた失恋の歌……」

「ロンドン・オリンピックの時にあの競技で金メダルとったあの選手が、何か言いよったやろ、あの言葉、ほら流行語にもなった……」

 酒席などで縦横無尽・ざっくばらんに会話をしていれば、さすがに明石家さんまといえど、普通の中高年同様にこういうことがある。いわゆる「固有名詞が出てこない」というやつだ。
 
 いまや、老人でさえスマホを持つ時代である。さんまももちろんLINEなどを駆使するスマホユーザーだ。スマホを開いてGoogleやYahoo!で検索すれば、たちどころに「答え」はわかるだろう。
 
 しかしさんまはそれをよしとしない。決してスマホに頼らず、その場で同席者の記憶と知識を借りながら、自分自身の頭でも思い出そうとするのだ。そしてほとんどの場合、さんまは最終的にその固有名詞を同席者と共に思い出す。
 
 頑張って思い出したその時の記憶で、その後も再度同じことを思い出せる。さりげないことだが、この反復が彼の脳みそを鍛え上げ衰えさせないのだと思う。

吉川圭三(よしかわ・けいぞう)
1957(昭和32)年東京下町生まれ。早稲田大学理工学部卒。1982年日本テレビ入社、「世界まる見え!テレビ特捜部」「笑ってコラえて!」等のヒット番組を手掛ける。ドワンゴ、KADOKAWAを経て2025年10月現在は映像プロデューサー。『たけし、さんま、所の「すごい」仕事現場』等著書多数。

デイリー新潮編集部

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