「辛口コラムニスト」が選ぶ「2025年」ベストドラマ 27年朝ドラ「脚本家」による傑作コメディに唸らされた!

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 辛口コラムニスト・林操氏による今年のドラマ・ベスト&ワースト。中編【「辛口コラムニスト」による2025年「連ドラ」批評 主演男優賞は「松坂桃李」 栄えある主演女優賞は?】に続き、後編ではいよいよ2025年のワースト&ベスト連続ドラマ1位の発表だ。ここまでたどり着いた読者の皆様、お疲れ様でした。【前中後編の後編】

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アナウンサー:2025年の連続ドラマ、いよいよワースト&ベストの1位の発表です。

林操:ほい。では連ドラ年間ランキングのボトム&トップ、まずは2025年のワースト1位は……

▼「PJ~航空救難団~」【テレビ朝日系/木曜21時/4月期】
▼「波うららかに、めおと日和」【フジテレビ系/木曜22時/4月期】

……の2本です。

アナ:航空自衛隊でレスキューを手がける航空救難団(PJ)の教育隊が舞台となった群像劇が「PJ」、昭和11年に結婚した帝国海軍の中尉夫婦の新婚ラブコメディが「波うららかに~」でした。林さんがこの2本を2025年のワースト1位に選んだわけも、なんとなくわかってきた気がしますが、あえて伺います。どんな理由で?

林:中国には勇ましい早苗チャンが米国からハシゴ外されちゃったり、返還するパンダ2頭を“尖尖”と“閣閣”に改名しろなんて話がネットに出回ったり、そういう“気分はもう戦争”な今日このごろになって、ああ、そういえば春ごろ、変なドラマやってたなと思い出したら背筋が寒くなったのよ。それもチャンネルこそ違えど、2本のドラマが同じ木曜の21時スタートと22時スタートで、恐怖の惑星直列。あれは民放連による「木曜愛国スペシャル」だったのか?

アナ:どちらの作品も危機感を煽ったり戦争を賛美したりする内容でありませんが……

観測気球ドラマ?

林:一方、反戦を声高に唱える内容でもない。ここでひとつ考えてみてほしいことがあって、それはあの2本の企画の生まれた場所がテレ朝やフジではなくNHKだったら、ドラマとして制作されたかどうか。「エール」(2020年度前期)や「虎に翼」(2024年度前期)、「あんぱん」(2025年度前期)を朝ドラで送り出してきたNHKにおいて、です。

アナ:NHKは……作らないでしょうね、自衛隊や旧日本軍がメインになるドラマは。名作と認められるような原作でもないかぎり、たとえ反戦モノでも尻込みするんじゃないでしょうか。好戦に厭戦、どちらに受け止められても炎上リスクが高いですから。

林:でしょ? 10年前だったら民放だって作らなかったはずだけれど、2025年の民放は作った、しかも2局も。ワタシが怖いのはこの点です。官邸の幹部とやらが「ニッポンも核を持て」と“失言”したのが観測気球に見える人たちなら、テレ朝が「PJ」を、フジが「波うららかに~」を世に送り出したのも観測気球かと疑うこともできる。

アナ:あの2本はヒットにも話題にもならず、世間からの反発も強いものではありませんでしたが……

林:自衛隊――というより自衛隊員――を応援する一方、旧日本軍を毛嫌いしているワタシから見ると、「PJ」はスパルタンすぎるし、「波うららかに~」はお気楽すぎる。結局どちらもテレビドラマとして力のない物件になったことは、今のニッポンにとって幸いだったかもしれない。
 いや“ミギは喜び庭かけ回り、ヒダリは軍靴の音を聞く”ようなドラマではあったのかもしれないけれど、その度合いでいえば、たとえば、陸上自衛隊が舞台だった「テッパチ!」(フジ系/2022年)よりずっとおとなしかった。

 それでも世情・政情の変化は速くて怖いし、メディアの変化も速くて怖い。今は朝ドラで厭戦や反戦を描くNHKだって、経営は赤字だし予算の首根っこは国に押さえられているしで、いつ民放の後を追って転ぶかわからないうえに、2026年には民放のほうはもっと先に進むかもしれない。

アナ:2025年のワースト1位、選定理由がよぉくわかりました。

林:「働いて働いて働いて働いてまいります」が新語・流行語大賞に選ばれるような無理が通った年だもの、キツい自衛隊ドラマ、ユルい帝国海軍ドラマをワースト1位に選んでもいいでしょ。

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