紅白の「81.4%」は現代では不可能…世帯人数の激減で激変した、視聴率の「計算式」と「価値」

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過去との比較は無理

 64作目となったNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」の全話平均の世帯視聴率は9・5%だった(ビデオリサーチ調べ、関東地区:以下同)。この数字は「歴代ワースト2位」だと一部で報じられた。だが、40年前、50年前のデータを引っ張り出し、比べるのは無理がある。世帯視聴率の仕組みを考えれば、道理に合わないことが分かる。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】

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 世帯視聴率はその番組をどれくらいの世帯が観ていたかの割合を表す。例えば、100世帯中、10世帯がその番組を見ていたら、世帯視聴率は10%である。その世帯の誰か1人でも観ていればカウントされる。

 だが、弱点がいくつかある。その1つは、1人暮らし世帯も4人以上世帯も同じ1世帯としてカウントしてしまうところだ。だから視聴人数は出ない。

 そのせいもあって、テレビ局はもう世帯視聴率を使っていない。2020年4月以降は「何人が観ていたか」が分かる個人視聴率に移行した。

 個人視聴率は、観ていた人の性別、年齢なども細かく分かる。世帯視聴率とは情報量が比べものにならない。世帯視聴率はもうテレビ業界以外の一部マスコミしか使っていない。

 大河の話に入りたい。第1作は1963年の「花の生涯」だった。世帯視聴率調査は62年12月に始まった。まるで大河の開始に合わせたかのようだ。

 主演は2代目尾上松緑さんで井伊直弼に扮した。期間平均の世帯視聴率は20・2%。だが、この数字を現代の大河の世帯視聴率と比べるのは無理がある。世帯視聴率への誤解も招く。

 前提条件が違うのだ。1963年の全世帯総数は約2500万で、1世帯当たりの平均人数は3・81人だった。この数字がポイントである。3・81人の中から誰か1人でも「花の生涯」を観たら、世帯視聴率に結び付いた。

 時は流れ、2023年の全世帯総数は約5445万に増えた。ポイントである1世帯当たりの平均人数は2・23人にまで下がった。1963年には3・81人のうち1人が番組を観れば世帯視聴率につながったが、2023年は2・23人のうち1人が観なくてはならなくなった。差は1・58人。もともと少ない人数だから、この差は大きい。

 1世帯当たりの平均人数は年を追うごとに減っている。これが年々、世帯視聴率が下がっている理由の1つである。世帯内でテレビを観る人の絶対数が減り続けているのだ。

 無論、世帯視聴率には番組の良し悪しや録画率が大きく影響する。比較できる過去の数字は、1世帯当たりの平均人数がそう大きく違わない10年間程度が妥当だろう。

 1世帯当たりの平均人数はこう推移した。1960年が4・13人、80年が3・22人、90年が2・99人、2000人が2・67人、10年が2・59人、20年が2・21人。これでは40年前、50年前の数字と比べても説得力がない。テレビ局が世帯視聴率を使わなくなった理由の1つも過去の数字と比較できないからである。

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