「高校に学食あった?」への反応は地域によって大違い…「都立高」はゼロなのに「大阪府立高」は134校で設置のナゾ 専門家は「学食に大きな教育効果」を指摘

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学食の存続に危機感

 安くて美味しいと生徒に好評の学食だが、昨今の原材料費や人件費の高騰により運営が難しくなっている姿もアンケート調査から浮かび上がった。

 2023年9月には広島市の食堂運営会社が業績不振で事業停止となり、広島県、大阪府、京都府、静岡県などの高校で学食が運営できなくなる事態に陥った。

「学食の存続に危機感を抱いているか?」との質問に「抱いている」と答えた自治体は大阪府、埼玉県、千葉県、福岡県、群馬県の1府4県にのぼった。

 一方、「学食から給食へ」という動きも起きている。保護者の負担軽減を主な目的として、中学生の給食を高校に“出前”する自治体も現れている。

 今回のアンケート調査では茨城県と北海道が「市町村など一部の自治体が、地元に設置されている高校のため、中学生の給食を提供している」と回答。さらに群馬県の工業高校は3種類のメニューから選べるなど、学食とほぼ同じスタイルで給食を提供するという全国的にも珍しい取り組みを行っている。

 改めて高校の学食をどう位置づけるべきか、学校給食などに詳しい藤本勇二・武庫川女子大教授に取材を依頼した。まず、高校における学食の意義について聞いた。

「日本語には『同じ釜の飯を食う』という慣用句があります。高校生が友達と学食で一緒に昼食を摂るというだけで、教育的効果が期待できると言えるのです。さらに注目したいのは現在、大学生の食生活がかなりひどいことが調査で浮かび上がっていることです」

なぜ大学生は残飯を平気で捨てるのか?

「食事を抜いたり、栄養バランスが偏っていたりと、大学生の食生活はとても健康的だとは言えません。小学校や中学校では給食が提供され、栄養士さんが栄養バランスに配慮したメニューを日々作っています。高校の学食は麺類や丼が中心だとはいえ、やはり可能な限り安全・安心なレシピになっているでしょう。つまり中学生と大学生をつなぐ食育の場として高校の学食は再評価されるべきだと考えます。また同じ文脈から、給食を出す高校が増えることも歓迎すべきでしょう」(同・藤本教授)

 ここで改めて注目すべきは、「もう立派な大人」と見なされる大学生の食生活がなぜひどいのか、の観点だという。

「背景の一つとして『誰が調理したのか分からない食事』という点は見過ごせません。いわゆる中食産業が提供する大量生産・大量販売の食べ物にも様々な利点はあるでしょう。しかし『誰が調理したのか』は全く分かりません。その結果、食べ物のありがたみを感じにくくなり、食事のバランスを無視したり、平気で残飯を捨てることが増えるのではないでしょうか。一方、高校の学食は目の前で調理スタッフが生徒のために料理を作ります。ごく自然に『ありがとう』という気持ちが浮かぶ高校生は多いはずです」(同・藤本教授)

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