新幹線で絶えない外国人観光客の「スーツケース」トラブルは解消されるか…JR東海が打ち出した「3つの対策」予想以上の効果とは
「特大荷物コーナー」の有効活用
JR東海は日本人乗客の不満を把握し、改善のため“社会実験”の実施に乗り出す。興味深いことに実験がスタートしたのは今年7月からであり、SNSで「予約していない外国人観光客が勝手に『スペース』にスーツケースを置いている」という投稿が拡散した9月や10月よりも早かった。先手を打ったとも言えるだろう。
「『特大荷物コーナー』の利用方法を変更する試行は今も続けています。注意していただきたいのは、7号車を除く指定席の車両で、最後部座席後方にある『特大荷物スペース』は、現在でも最後部の座席指定席を購入したお客さましか利用できません。一方、客室と客室を結ぶ通路に設置している『特大荷物コーナー』は今年7月から予約の必要がない“フリースペース”にするという試行を行っているのです」(同・JR東海)
試行の手応えは感じているという。例えばスーツケースを巡るトラブルの解決策として、「特大荷物コーナー」が有効活用できるようになったからだ。
「新幹線のマナーをよく知らない外国人観光客のお客さまが、通路にスーツケースを置いてしまうことがあります。乗務員やパーサーが車内を巡回していますから、乗務員やパーサー自身が見つけた場合や、日本人のお客さまから問題の発生を教えていただいた場合でも、外国人観光客のお客さまに『「デッキ部の荷物置場」は予約不要なので、そこにスーツケースを置いてください』とご案内できるようになりました」(同・JR東海)
「LUGGAGE EXPRESS」
JR東海は東海道新幹線に持ち込まれる特大荷物の数を調査しており、現在のところは設置している「スペース」のみで需要を満たしているという。ただし、ご存知の通り外国人観光客は特大のスーツケースだけを新幹線の車内に持ち込んでいるわけではない。
スーツケースのメーカーや販売サイトの中には、大きさの目安を公式サイトなどに掲載しているところがある。それによると3辺の合計が144センチから155センチは「Lサイズ」で、131センチから139センチは「Mサイズ」だという。こうした中型・大型の荷物を複数、新幹線の中に持ち込む外国人観光客は多い。
東海道新幹線に持ち込まれるスーツケースそのものを減らしたい──こう考えたJR東海がJTBと共に11月から始めたサービスが「LUGGAGE EXPRESS」だ。これは、東京・京都間を新幹線で移動する外国人観光客を主な対象としたサービスで、彼らの手荷物を滞在先の宿泊施設や駅で預かり、新幹線の業務用室などを用いて、当日中に旅行先のホテルに配送するものだ。これにより客室内に持ち込まれる荷物を減らし、サービス利用者には、移動日にも手ぶら観光を楽しんでもらおうという狙いだ。
「外国人観光客の皆さんは日本に長期滞在する傾向が強く、そのため荷物の量が増えます。人気観光地である東京と京都の間を移動する際には東海道新幹線を使われる方が多いので、車内に多くのスーツケースが持ち込まれているというのが現状です。実のところ外国人観光客の皆さんも大量の荷物を抱えて新幹線に乗ることは大変な労力で、私たちは東京駅でヒアリングを行い、当日のホテル間荷物配送サービスのニーズを確認しました」(同・JR東海)
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