新幹線で絶えない外国人観光客の「スーツケース」トラブルは解消されるか…JR東海が打ち出した「3つの対策」予想以上の効果とは
特大荷物「スペース」と「コーナー」
そもそも「特大荷物」について知らないという日本人も少なくなく、SNSで拡散すると一部の鉄道ジャーナリストや旅行ライターなど、新幹線の知識が豊富な“プロ”も議論に参加する事態に発展した。
ここで用語の説明が必要だろう。「特大荷物」はJR東海などが規定したもので、「縦・横・高さの3辺の合計が160センチ超250センチ以内」が定義だ。この大きさに合致するスーツケースは、一般に国際線の飛行機に預け入れる場合も追加料金が必要となるサイズで、見たことがない人がいても不思議ではないレベルだ。
次に「特大荷物スペース」と「特大荷物コーナー」は、どちらも東海道・山陽新幹線に特大荷物を置くための場所を指す。前者は7号車を除く新幹線指定席車両の最後部座席後方に位置し、椅子との間にある空間に用意されている。後者は客室と客室を結ぶデッキに設置された専用の荷物置き場のことを指す。
重要なのは「特大荷物スペース」と「特大荷物コーナー」は、日本人であれ外国人であれ、東海道・山陽新幹線を使う乗客全員の利便性を向上させるために設置されたということだ。にもかかわらず、なぜ日本人乗客から不満が殺到する事態になったのだろうか。
勝手に荷物を置く外国人観光客
先に結論を言えば、一時はSNSで厳しい投稿が相次ぎ、トラブルを複数のネットメディアが報じたにもかかわらず、これ以上の事態に陥ることなく推移している。果たして、どうやって企業イメージの毀損を回避したのか、経緯についてJR東海に話を聞いた。
「2010年代から東海道新幹線でも特大荷物の持ち込みが増えるようになりました。そして2020年には東京オリンピックの開催が予定されていたこともあり、19年に対策を講じると発表し、車両改造が不要な『特大荷物スペース』は20年から、車両改造が必要である『特大荷物コーナー』は23年から利用できるようにしました。しかし19年末から日本をコロナ禍が襲ったこともあり、東海道新幹線を利用されるお客さまは減少してしまいました」
コロナ禍の終息と共に東海道新幹線を利用する乗客は増えていく。外国人観光客だけでなく、日本人も出張や観光で新幹線を使う。ここで軋轢が生じた。
当時、「スペース」も「コーナー」も東海道・山陽新幹線の指定席と紐付く形で利用を認めていた。つまり新幹線の指定席を買う際、特大荷物の置き場も一緒に予約するというシステムだったのだ。ところが利用規約を知らない外国人観光客が、予約なしで勝手にスーツケースを置いてしまうケースが頻出してしまう。
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