「命を燃やし尽くすかのような下準備が見える」 三島由紀夫『仮面の告白』の天才的な論理力を現代文講師・宗慶二氏が徹底解説!

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 2025年で生誕100年の節目を迎えた三島由紀夫。その「論理力」や「語彙力」などに目を凝らしてみると、天才的ともいえる新たな側面が見えてくる――。元東進ハイスクールの現代文講師・宗慶二氏が、『仮面の告白』を中心に、三島文学を徹底解剖した。

※新潮社のYouTubeチャンネル「イノベーション読書」内の番組【三島由紀夫『仮面の告白』 天才的な論理力を読む(現代文講師 宗慶二)】などの一部を再編集した記事です。

――まず、三島由紀夫という作家をどのように評価されますか。

 三島と言えば何を思い浮かべるかと学生に質問すると、大抵は割腹自殺という答えが返ってきます。政治的で過激な右翼主義者というイメージが先行してしまい、作品に迫らない学生が非常に多いのが現状です。

 しかし、三島は稀に見る論理力や語彙力、表現力の持ち主です。抽象的とも言える文体を詩的に展開する力などは天才的ですし、詩的な情緒と論理性という、本来矛盾しうる2つの才能を一つの体に宿し、それを高次元で一個の作品に結晶化させている点など、他に類を見ないですね。

――三島文学の論理構造にはどのような特徴があるのでしょうか。

 三島の論理で最も目立つ特徴は、まず自身の主張を抽象的な形で提示した後、それを具体的に噛み砕いてエピソードの中に引き込んでいくところです。読み手はその文体の華麗さや美しさにまず魅せられ、引き込まれた後にその種明かしがゆっくりと起こるという構造になっています。

 これはアメリカンパラグラフエッセイと呼ばれる型に当てはまるのですが、三島の凄いところは一つの論理構造に固定化せず、作品ごとに使い分けたり、一つの作品の中でも文章レベルと作品構成レベルで異なる論理を使ったりすることです。他の作家には見られない特殊な特徴と言えるでしょう。作品を書く前の段階で、まるで命を燃やし尽くすかのような下準備があったことが窺えます。

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