「TBSの真実はどこにある?」日テレ・フジが仕掛ける“土曜報道戦争” 報道系と情報系の「矛盾」つく
報道と情報が全く別
情報制作局と報道局の番組は正反対。例えば「ひるおび」では高市早苗首相寄りの論調が目立つのは周知の通りだ。
TBSが30日に放送する「サンデージャポン」の年末特番「年末ジャポン」(午後4時半)には、静岡県の前伊東市長・田久保眞紀氏(55)が出演する。ただの落選候補なら分かるが、田久保氏は公職選挙法違反、有印私文書偽造罪、地方自治法違反(偽証)などに問われる可能性がある。
番組内で田久保氏に疑惑の真相を問い質すと言うが、証言の真偽を判断するのは無理だろう。本人が番組内で虚偽の証言をした場合、それが全国にばらまかれてしまうことになる。
民放連の放送基準にはこう書かれている。「国の機関が審理している問題については慎重に取り扱い、係争中の問題はその審理を妨げないように注意する」。田久保氏の出演はそうならないのだろうか。
TBSの報道系と情報系の乖離が一因となって起きたテレビ界最悪の不祥事がオウムビデオ問題だ。1995年に発覚した。情報系のワイドショーが独断でオウム真理教幹部に故・坂本堤弁護士のインタビューを見せていた。報道系は知らなかった。報道系と情報系が連携していたら、ビデオを見せることにストップがかけられ、夫人と赤ん坊まで惨殺されてしまった悲劇は防げた可能性がある。
日テレは1993年から2008年まで土曜日の日中に報道局制作の「報道特捜プロジェクト」を放送していた。視聴者の怒りと涙を代弁する番組で、高額アルバイト詐欺、融資保証金詐欺、偽ボランティア募金詐欺など市民を泣かせる問題の真相を追及。高視聴率番組として知られた。この番組が新番組の叩き台になるのではないか。
フジも4月からTBSに挑む。相手は「報道特集」。ただし、フジは土曜午後5時からで、「報道特集」は同5時半からなので、重複するのは30分である。こちらも狙い目はTBSの報道と情報の隔たりだろう。フジがほかの報道・情報番組と連携し、統一性を前面に押し出せばチャンスはある。
「報道特集」との矛盾
「報道特集」は11月29日、高市氏の台湾有事発言について特集した。登場した大学教授たちは高市発言を批判し、番組としても否定的だった。「ひるおび」の主張とは反対だ。こんな矛盾をいつまで続けるのだろう。TBSの真実はどこにあるのだ。論調のバラツキは同局のアキレス腱だ。新聞、雑誌も一貫性がある。
フジには1997年から2001年までNHK出身の森本毅郎氏(86)がMCの「スーパーナイト」という情報番組があった。放送枠は現在の「Mr.サンデー」と同じ日曜午後10時台だが、カラーは全く違った。森本氏の個性が前面に出たニュースショーだった。この番組も視聴率は良かった。
これは情報番組だったが、フジは報道と情報の人間が頻繁に人事交流する。垣根はない。フジにも報道番組の制作能力は十分ある。
MCの有力候補は低視聴率により来年3月末で「Live News イット!」を降板するNHK出身の青井実氏(44)。NHKのエース級アナの1人だったこともあり、環境が変われば活躍が期待できると見られている。
青井氏は番組スタッフへの物言いがきつかったため、不適切だったとして、今年4月にフジが本人に再発防止の申し入れを行った。しかし「イット!」の降板理由ではない。処分はなかったのだ。
調査にあたったフジ側の弁護士も「重大なパワハラとまでは言えない」との判断を示していた。華のある人なので、新報道番組に向いているのではないか。
一方でフジは橋下徹氏(56)がMCの「日曜報道 THE PRIME」(日曜午前7時半)を来年3月で終了する。この番組のスタッフの多くが新報道番組に移行する。
[2/2ページ]

