「およげ!たいやきくん」誕生から50周年! 累計457万枚の国民的ヒットを支えた“子ども”でも“若い女の子”でもない意外な客層
曲に共鳴したのは子どもだけでなく……
恐るべき「たいやきくん人気」といった感じだが、ここで今一度、歌詞(一部)を振り返ってみよう。
「♫毎日毎日、僕らは鉄板の、上で焼かれて、嫌になっちゃうよ
ある朝、僕は店のおじさんと、喧嘩して海に飛び込んだのさ。
初めて泳いだ海の底 とっても気持ちがいいもんだ。 (中略)
岩場の陰から食いつけば それは小さな釣り針だった。(中略)
おじさん唾を飲み込んで 僕を美味そうに食べたのさ(おわり)」
歌詞に即した行動は、まさに子どもたちのシンプルかつ、愛着を思わせるが、一方で同曲には、こんな世評が付いて回ったことも事実だ。
“サラリーマンの悲哀を歌った唄”。なるほど、上から管理されている身を捨て、自由を求めたい気持ちがありつつ……という意味か。
そして、この見方の裏には、れっきとした社会的出来事があった。
それこそが、1975年11月26日から12月3日までおこなわれた「スト権スト」だ。わかりやすく言えば、国鉄(現JR)のストライキである。つまり、この間、電車はストップし、休業(自宅待機)を余儀なくされるサラリーマンも続出した。この時、子どもと一緒に、「ひらけ!ポンキッキ」を観た世のお父さんたちが、この曲を支持したのである。
〈国鉄のストの時、家にいた父親が子供と一緒に歌い始めた〉(朝日新聞。1976年2月14日)
〈スト権ストで足止めを食らったパパたちが、仕方なくわが子と一緒にチャンネルをひねったところ「ウーン」と、たいやきくんに共感した〉(前出・毎日新聞)
実際、「ひらけ!ポンキッキ」の視聴率も、11月末を境に、従来の4~5%から、14~15%に跳ね上がったという。
レコードの売れ方にしても、「普段は若い女の子から火がつくものだが、この曲は、サラリーマンや主婦が買い求める場合が多い」というレコード店主からの声が頻出。こちらは“子供に頼まれて”という可能性もあるから一概には言えないが、当時の渋谷駅近くのスナック・バーの店主の言葉として、以下がある。
〈有線のリクエストが多いですね。サラリーマンに人気があるというのは本当でしょうね〉(読売新聞。1976年1月28日)
子供たちだけでなく、親世代であるサラリーマンとの両輪が、同曲をビッグヒットに押し上げたとみて間違いはなさそうだ。
【第2回は「『およげ!たいやきくん』を歌った『子門真人』はプロ歌手ではなく“サラリーマン”だった…歴史的ヒット曲のギャラが『5万円』だった裏事情」超メガヒット曲誕生の裏側にあった秘話】
※1)オリコン調べによれば、上位トップ3は、『およげ!たいやきくん』(457万7000枚)、『女のみち』(宮史郎とぴんからトリオ。325万6000枚)、『世界に一つだけの花』(SMAP。313万2000枚)(*2025年1月調べ)。




