「米国は核兵器の多様性で中国に負けつつある」 中国軍の「本当の実力」とは 上層部は汚職で相次いで粛清

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 中国側の勝手な思惑でトラブルを起こされてはたまったものではないが、その狼藉ぶりはレーダー照射だけにとどまらない。あろうことか「爆撃機」までも日本に向けて飛ばしてきたのだ。威嚇行為にいそしむ中国軍だが、その内実はというと……。

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 中国軍の爆撃機「H-6K」が飛来してきたのは、レーダー照射があった3日後のこと。ロシア軍の爆撃機と共に太平洋上に進出すると、ルートを北東に変え、一直線に東京に向かってきた。その後、四国沖のあたりで引き返したというが、元空将で麗澤大学特別教授の織田邦男氏はこれも中国軍による「威圧」に他ならないと語る。

「H-6型はソ連時代から活躍していた露軍の爆撃機・TU-16を基に作られました。とはいえその中身は進化しており、H-6Kは核弾頭を装着できるミサイルCJ-20を発射できます。射程は約1500キロとされ、今回の経路で東京は射程圏内に入ります。露軍との共同訓練は事前に決まっていたのでしょうが、情勢を受けて、脅しのために東京を模擬攻撃する形に変更したのかもしれません」

「米国は核兵器の多様性で中国に負けつつある」の指摘も

 ひと昔前までは「見かけ倒し」という評が付きまとっていた中国軍だが、今やその実力は侮れないというのだ。実際、中国軍の人数は自衛隊の約8倍にあたる204万人ほどとされ、艦艇は約690隻、航空機は約3400機と、いずれも自衛隊の139隻、370機を大きく引き離す。

 防衛研究所の地域研究部主任研究官・杉浦康之氏は、今年9月の「抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80周年記念式典」での軍事パレードにおいて、次々と新兵器がお披露目されたことに驚きを覚えたと語る。

「中国軍は現在600発超の核弾頭を保有しており、2030年までに1000発を目指すといわれています。パレードでも陸・海・空それぞれの兵器に対応した核を搭載できるミサイルが発表され、中には射程範囲が『全世界に達する』と紹介されたものもありました。米国が核兵器の多様性における競争で負けつつあると指摘した米研究者もいるほどです。台湾有事を念頭においたミサイルも多数見られました」

 さらに軍用無人航空機(UAV)の開発も見逃せない。12月には、空中で100機ほどのドローンを発射できる最新型UAV「九天」を中国軍が発表した。パレードでは敵のドローンを迎撃するための装備も公開され、最新鋭の技術を惜しみなく披露していたという。また、11月には3隻目の空母「福建」が就役し、ゆくゆくは原子力空母の完成も目指しているとされる。

「中国軍は世論戦・心理戦・法律戦の“三戦”といって、相手国の戦意をそぐことにも力を入れています。パレードで力を見せつけ、米国や日本に『ウチと戦ったらコストがかかりますよ』ということを暗に示すのが心理戦。日本に挑発行為をし、高市首相の『存立危機事態』発言を批判するような声を増やして相手国の分断を狙おうとするのが世論戦です。自国メディアなどで軍事力を積極的に誇示するのもそう。また、根拠が正しいかは別として、中国側はあくまで手順や法を守っていると主張し、相手の非を責めようとするのが法律戦にあたる」(同)

 中国側もコストのかかる戦争は避けたいため、軍事力を背景に“無血開城”を台湾有事などで狙っているというのだ。そのため、パレードや中国メディアでの発表をうのみにし過ぎると、中国軍の実力を見誤ることにつながると杉浦氏は警告する。

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