「米国は核兵器の多様性で中国に負けつつある」 中国軍の「本当の実力」とは 上層部は汚職で相次いで粛清

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「戦争する余裕はない」

 元海将で金沢工業大学大学院の伊藤俊幸教授は、そもそも中国軍は台湾有事になっても勝てないとみている。

「戦争では、攻める側は守る側の3倍の兵力が必要になり、海を挟むと5倍は要るといわれています。現状の中国軍の輸送力では、5万~6万人しか台湾に兵を上陸させられず、ウクライナ侵攻をしているロシアのように、泥沼にはまるだけです。台湾有事になれば、中国は勝てない戦争を始めることになります。中国側は認知戦も仕掛けてきているわけだから、その言い分を垂れ流して“怖い、怖い”なんてマスコミがあおり立てては、中国の思う壺です。日本側の冷静な対応こそ評価すべきでしょう」

 中国軍の研究家であり、外務省中国課への出向経験もある田中三郎氏もまた「中国に戦争などしている余裕はない」と語る。

「習近平国家主席(72)は2018年に憲法を改正して国家主席の任期制限を撤廃するなどしたため、軍部の一部から強い反感を持たれているようです。例えば今年8月には、党の中枢施設も多くある中南海地域で、第82集団軍という軍の部隊と、習主席の身辺を警護する武警部隊が衝突したとみられる情報がネットで伝わりました。第82集団軍は中国軍の制服組トップ、張又侠(ちょうゆうきょう)・党中央軍事委員会副主席が過去に副司令官を務めており、彼の子飼い部隊です。そこが暴発したのですから、いかに統制が利いていないか分かります」

軍に対して習主席も不信感を

 軍に対して習主席もまた、不信感を抱いていると先の杉浦氏は言う。

「9~10月にかけて、党中央委員会の全体会議の開催直前に、軍高官が10人以上、汚職で処分されて軍籍を剥奪されました。22年に新体制が発足した際、習主席が厚い信頼を置いて選出した軍事委員会の指導部メンバーも含まれていたため、かなりショッキングな出来事だったと思われます」

 習主席は、江沢民や胡錦濤といった歴代主席の流れをくむ人物を排除する目的もあって、汚職摘発に力を入れていた。

「それだけに、自身が抜てきした人物だけを見逃すことはできませんでした。これで相当、軍に失望したらしく、失脚した党中央委員の後釜には、軍出身の候補がいるにもかかわらず、その人物を登用しなかった。レーダー照射などは、軍が習主席の信頼を取り戻そうとした面もあるのです」(同)

 中国軍の言動を真に受けていては、策略と“内輪もめ”に付き合わされるばかりということなのだ。

週刊新潮 2025年12月25日号掲載

特集「日本人は辟易…ヤクザな中国を暴く」より

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