「『非核三原則』は“平和っぽく気持ちよくなる”ためのものではない」 高市首相側近「官邸筋」の核保有発言を前首相補佐官が擁護
「“平和っぽく気持ちよくなる”ためのものではない」
官邸幹部・A氏による“核保有発言”は、米国や中国でも取り上げられる騒ぎとなり、野党側からはこの幹部の更迭を求める声が相次いでいる。一方、日本の安全保障環境が厳しさを増す中、核保有発言は「過激な意見ではない」と擁護する専門家の声も。
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石破政権で首相補佐官を務めた長島昭久氏(63)は、オフレコ発言が報じられたことについて、
「私も首相補佐官時代、記者の方と核の話をオフレコですることがありましたけど、一つも記事にはなっていません。なぜ、今回に限って表沙汰になってしまったのか……。ジャーナリズムにとって良いことなのでしょうか。これでは、われわれは記者の方々と率直な議論はできなくなります」
と、疑問を呈した上で、こう指摘する。
「核の議論自体を封じることがおかしいんですよ。そもそも『非核三原則』は何のためにあるのかを考えなければなりません。“平和っぽく気持ちよくなる”ためのものではなく、あくまでも国民の命と平和な暮らしを守るための政策なんですから。外部環境がこれほど厳しくなった今、不断に見直していかなければならないはずです」
「35年には中国の核弾頭数が1500発に」
岩田清文元陸上幕僚長は“核保有発言騒動”について、次のような見方を示す。
「A氏の言っていることは、過激な意見でも何でもない。今、日本を取り巻く安全保障環境は急激に変化しています。北朝鮮は日本を射程に収める核ミサイルを開発し、中国も核戦略の増強を進めています。240発だった中国の核弾頭が、わずか4年で600発まで増えているのです」
衝撃的な試算がある。米国防総省が24年12月、公表した中国に関する国防年次報告書によると、中国の核弾頭の数は30年には1000発を超えるというのである。
「別の米国の報告書によれば、35年には中国の核弾頭数が1500発に達するともされていました。米国とロシアは約1700発であり、核戦力はほぼ拮抗することになります。このような現実があるにもかかわらず、核についての議論すら行わずに、果たしてわが国を守ることができるのでしょうか。メディアはいつまで、リアリズムを欠いた“空想的平和主義”にとどまるつもりなのでしょうか」(同)
この点、元空将で麗澤大学特別教授の織田邦男氏が語るのは、以下のような現実である。
「25年12月4日に公表された米国の『国家安全保障戦略2025』では、自国利益を最優先する『米国第一主義』が前面に打ち出されました。自由主義社会の盟主たる面影は失せ、トランプ大統領の口癖である“同盟国が米国の安全保障にただ乗りしてきた”との批判が色濃く反映されています。過去20年以上、米国の安保戦略文書が一貫して主張してきた“朝鮮半島非核化”も抜け落ちています」
続けてこう指摘する。
「米国の核の傘はほころびかけています。今こそ、核議論をやらなきゃいけない。念仏のように非核三原則を唱えるだけで、本当に国民を守ることができるのか。この問いは非常に重要です。今回、朝日をはじめとするメディアは“核保有”に触れただけで問題があるかのように報じていますが、これでは冷静な核の議論などとてもできない。しかも、メディアが騒ぎ立てることで中国には付け入る隙を与え、米国は不信感を持つわけです。国益上、マイナスしかありません」
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